ずっとずっと涙が止まらなくて。

私は涙を流しながら言った。

「私、卑怯だよ…。だって運命が嫌いって言ってたのに、今は雪那と運命の番でよかったって…」

「別にいいんだよ。初音らしくていいじゃん」

「でも、私は雪那を不幸にする…!」

そんなふうに言う私を、雪那は優しく抱きしめた。

私の耳元で優しく言い聞かせるように言う。

「初音、しっかり聞いて。俺には初音を失う以上の不幸はないんだよ。それに、初音の言う不幸ってのが起きるのは初音が俺の近くにいてくれる証拠だろ?」

雪那は私の頬に触れて、笑う。

私の心臓がドクンッと音を立てる。

「それって最高」

とびきりの笑顔を見せる雪那に、私の心臓は激しくはねた。

好き。

この気持ちが、あふれてしまう。

「…き」

「え…?」

「私、雪那が好き。もし許されるなら…今度こそ運命を信じたい」

「それって…」

雪那と同じように、私も笑った。

何年ぶりの笑顔か分からない。

ただ、嬉しかった。

「私と付き合って、雪那」

私が返事をすると、すぐに唇が口をふさがれた。

雪那とする2回目のキスは甘くて甘くて、本当に愛おしいと感じた。

幸せだ。

こんな幸せあっていいのだろうか。

そんなことを考えながら、私達は笑い合った。

バンッ!!

「初音ちゃん!!」

「蜂屋雪那ー!!!」

よいんに浸っていると、羽那と詠が入ってきた。

「蜂屋!やっと見つけたわよ!!あんた、私の初音をなに泣かしてんのよ?!」

怒った様子で雪那に詰め寄る羽那。

「初音ちゃん!無事告白成功ですね!!きゃー!これぞ運命の番…!」

にやにやと笑いながら私の詰め寄る詠。

うるさくて大変だけど、いつだって私を1番に考えてくれる。

この2人は、本当に最高の親友だ。

「羽那、私の涙は嬉しいからだよ。心配してくれてありがとう」

「…あなたがそんなこと言うなんて、珍しいわね。変わった…?」

驚いた表情で私を見つめる羽那がおかしくて、私は笑った。

「私、雪那と付き合うことにした。もうあの人におびえる私はいない。だってね、雪那が好きだから」

私の決意したような言葉を聞いて、羽那はほっとしたように涙を流した。

こぼれる涙を、私がふく。

「よかった…よかった…!吹っ切れたんだね。幸せになってね…!」

私は羽那にだけは、過去を全て伝えていた。

ずっとずっとそばにいてくれた羽那には、感謝してもしきれない。

「うん、ありがと」

詠のことも巻き込んで、私達はぎゅーっと3人で抱きしめ合った。

「ちょっと初音、俺は?」

少しすねてる雪那に、私はベーッと舌を出す。

「雪那は彼氏なんだからいいでしょ?」

驚いたように目を見開いた雪那は、照れて顔を隠した。

「そういうの反則」

私達の運命は永遠だ。

どんな不幸があっても、それは雪那の隣にいる証。

私はもう何にも縛られないよ。

羽那と詠がいる前で、私達はキスをした。

甘くて溶けそうなキス。

笑い合う私達に羽那と詠は微笑んでくれた。

「結婚式には呼んでくださいね…!」

「初音を傷つけたらころーす」

物騒なことを言った羽那に、雪那は苦笑した。


***


あれから2年半という時が経った。

私達は今日卒業する。

私はあの後留年をした。

雪那と2年間同じクラスになり、最高の毎日を過ごした私に悔いはない。

母さんは私が医者を目指さないと言っても、笑って喜んでくれた。

今は再婚もして、本当に幸せな毎日を送っている。

私達もそうだ。

高校を卒業した私達は、社会人になる。

大学には進学しないと決めた。

雪那はもともと作曲をしていて、私もやらせてもらって2人で活動者をしていく。

雪那が大切にしているものを、私も大切にしたいと思ったからだ。

「俺を選んでくれてありがとう」

いつもそう言って、雪那は優しいキスをする。

そんな日々が大好きだ。

「好きだよ」

私にはまだそんな言葉しか言えないけど。

でも、それでも幸せなのだからそれでいい。

ありがとう。

もう、ごめんねは言わない。

「私が変わったのは、キミに憧れたからだよ。愛してる、雪那」

今日もキミに憧れる。

そして、キミを愛してる。

これだけは何があっても変わらない。