後夜祭が始まった。

にぎやかでみんなが楽しそうな表情を浮かべる中、私は暗い気持ちだった。

自分で決めたこととはいえ、やっぱり苦しい。

でも、あの日のようなことになりたくない。

私はきっと雪那を不幸にしてしまうから。

「初音先輩!」

噂をすればなんとやらというやつだ。

雪那が反対から走ってきた。

「先輩、いつもの空き教室で俺と一緒に花火見ましょう」

昼休みに毎日行っていたあの場所を言っているのだろう。

午後は一緒に回れなかったし、おわびも兼ねて行こう。

そして、私は彼のもとを離れる。

「うん、いいよ」

雪那はぱあっと表情を明るくして、私の手をひいた。

「行きましょ!」

私達は駆け足であの場所に向かった。

空き教室に着き、窓側に腰を下ろす。

それから、雪那は私に上着をかけてくれた。

この位置からなら、きっと花火も見てるだろう。

と、その前に…なんなんだこの変な空気は。

雪那も何もしゃべらないし、正直気まずい。

何か話題を見つけて話そうと思った時、雪那は私に真剣な瞳を向けた。

「困りました?」

「あ……えと、あのこと?」

口に出すのがなんだか恥ずかしくて、私はあえて言わなかった。

けれど、雪那には伝わったようでふわっと笑った。

「そうです」

「……困った」

「ふふっ、そうですか。少し嬉しいです。あともうひとつ、真剣な話していいですか?」

「いいけど…」

また何か話すことでもあったのかな、と疑問に思う。

その時、窓の外でひゅ〜と光が音を立てる。

ドンッ!!

という音と共に、雪那は言葉を発した。

「ずっと好きだった。俺と付き合って」

「せつ…な?」

夢だと思った、これは現実じゃないと思った。

でも、この瞳は本物で現実だということを教えている。

「私も…雪那のこと好き…!」

小さく発した言葉は、しっかりと彼の耳に届いた。

私を愛おしげに見つめる雪那に、残酷な言葉を続けてしまった。

「でも、付き合えない。ごめんね」

「え…?な、なんで…」

「私はあなたがあの人みたいになるのが怖いの!きっとまた、みんな傷つける。私のせいで」

『運命だから…』

どうして今さら、あの人のこと気にしてるんだろう。

あんな最低男。

でも、事実だった。

結果私はたくさんの人を傷つけるだけだった。

「それって、どういう意味?」

「…言えないの。私、決めたから。雪那のもとを離れる。さよなら」

私は立ち上がって雪那の上着を持ったまま教室を飛び出して行った。

私をなんでも呼び止めるけど、全部無視して走った。

きれいな花火さえも、残酷なものに見えて仕方がない。

こんな風に終わらせるつもりなかったのに。

告白なんてされると思わなかった。

でも、今は話せない。

こんな涙と嬉しさ混じりの顔は見られたくないよ。

ごめん、ごめん。

私は心の中で叫び、走った。

さよなら、もう私のことは忘れて幸せに生きて。

「さよなら…!」

臆病な私は、振り返ることができなかった。

きっとこれでいいんだと言い聞かせることしかできなかった。