ミスコンは私達の優勝で終わった。

でも、今は喜んでなんかいられない。

私は雪那を好きなってしまったと気がついた。

私とは正反対の場所にいる彼と、結ばれていいはずがない。

だから、彼のもとは離れる。

「初音」

ステージ裏で休んでいたところを、涼真に声をかけられた。

もう涼真を見ても驚かない。

私は冷静に返事をした。

「何?涼真」

「…あのさ。ちょっと話あるんだけど、いい?」

私は周りを見る。

まだ人も多くいるので、さすがに場所を変えないとまずい。

涼真は教師なら誰でも知っているであろう、有名な不良生徒だ。

私といるところを見られたらどうなるか不安だ。

「場所だけ変えていい?」

うなずいた涼真見て、いつも使っている空き教室に向かった。

空き教室に着いて鍵を閉め、涼真に聞く。

「それで?話って何?」

「あの蜂屋雪那ってやつのこと…その、好きなのか?」

きっとさっきのミスコンを見て言っているのだろう。

私が告白をオーケーしたから。

でもあのミスコンは、最初から告白にイエスの返事以外が存在しない。

ノーと答える人はいない。

でも、私は…。

「うん、好きだよ。だから離れる」

「は…?なんで!」

「だって!!」

私は涼真に向かって声を荒げた。

それと同時に、涙がボロボロとあふれだす。

「私は雪那の隣にいちゃいけない存在なの…!私はいろんな“悪いこと”をしてきたから、雪那のことも不幸にする…きっと。だから、好きだから傷つけたくないの…!!」

こんなに人を想うことが辛いだなんて、知らなかった。

恋ってもっと素敵なものだと思ってた。

やっぱり私に恋ができるはずないよ…。

「…俺はさ、初音に好きな人ができて嬉しいよ」

「え…?」

「初音が初めて自分で動いてる。その事実が、俺は嬉しい。まあ、相手が俺じゃないのが悔しいけどな…」

そうは言いながらも、涼真は優しく笑ってくれた。

でも、確かにそうだ。

初めてここまで誰かに心を動かされた。

「初音が決めたことなら別にいいけどさ、幸せになれよ。今からだって、初音はやり直せるって俺は思ってる。って…元カレが偉そうなこと言うなって感じだよな。はは」

「…ううん。ありがとう」

涼真にははげまされてばっかりだな。

本当にありがとう。

でも、もう決めたことだからさ。

雪那のもとは離れて、恋心も封印する。

「じゃあな。まあ、頑張れよ」

「うん。ありがとう、涼真!」

私は涼真に手を振った。

私達なりのケジメだ、きっと。

「じゃあね、涼真。今までありがとう」

私の小さな声が聞こえたのか、涼真は一瞬振り返って笑顔を見せた。

ありがとう。

そう言っているように見えたのは、気のせいかな?