ここからは完全に私達のターンだ。

集中しろ、と自分に言い聞かせる。

司会者が目の前に来て、私達に名前を聞く。

「お名前と自己紹介を軽くお願いします!」

「特進クラス1年の蜂屋雪那です。みなさんも知っての通り、デステニーの開発者です」

その言葉と同時に、会場内がざわざわとする。

あの蜂屋雪那くん?!という驚いているような声も聞こえる。

そして、私も雪那と同じように言う。

「医学科特進クラス2年の七瀬初音です。私は世界でも有名な医者家系、七瀬家の娘です」

私の言葉にさらに会場がざわついた。

そりゃ有名人ペアなんだから、驚いちゃうよね。

わざと雪那も私も公にしたのだ。

「ありがとうございます!それでは、今からメインの告白タイムになります!準備はいいですか?蜂屋・七瀬ペア」

私は雪那と顔を見合わせて、司会者に分かるようにうなずいた。

「それでは〜?スタートまで」

『3・2・1!』

どうぞという声と同時に、会場は静寂に包まれる。

そして、雪那がゆっくりと言った。

「初音先輩、俺は幼い頃からあなたに憧れていました。今ではそれが恋心になったんです」

それから、少し間を置いて。

「好きです。どうしようもなく初音のことが好きだ」

その言葉で私はなぜか泣きそうになった。

嬉しかったのだと思う。

どうしようもなく。

そして、私は今気がついてしまった。

「私も…好きだよ雪那」

おいでとでも言うように手を広げると、雪那は私に抱きついた。

観客はずいぶんと盛り上がる。

それが今の私には、遠くに感じてしまう。

これは演技じゃない、少なくとも私はそうだ。

ごめん、ごめん。

本気で好きになってしまったんだと、今更ながら気がついた。

ずっと素直になれなかった。

きっとこれからもそうだ。

私はキミの隣にいちゃいけない存在だと、そう言っている自分がいる。

これで最後だ。

本当に終わりだ。

だって私は、運命は嫌いなんだから。

私達の出番はそこで終わった。

その時、心の中で私はつぶやいた。

ごめんね、そしてさよならと。