その日の夜、私はいつも通りに雪那と一緒にご飯を食べていた

ご飯は私が作るけど、雪那も手伝ってくれる。

「そういえば初音先輩のクラスって、文化祭の決まりました?」

「あ〜まあね。言いたくないんだけど…」

「聞きたいです」

言いたくないって言ったのに、雪那は聞きたがった。

全くもう。

「コスプレカフェ…」

私がそう言うと、雪那は一瞬固まる。

それから食いつくように言った。

「初音先輩もコスプレするんですか?」

「まあ、するでしょー」

「ダメです。初音先輩ってかわいいじゃないですか。他の男に見せたくないです」

今度は私の方が固まって、ぼぼっと顔が赤くなる。

「べ、別に平気でしょ!それより、雪那のクラスは何するの?」

話題をそらさないとなんだかまずい気がして、聞いてしまった。

すると、雪那はため息をついて。

「執事喫茶。女子は料理の方担当らしい」

「…」

私はそれを聞いて、なぜか言葉が出てこなかった。

なんでか分かんないけど、すっごく嫌な気持ちになった。

ほんと、どうしたんだろ。

「そっか」

「…初音先輩、どうしました?」

すぐに私の異変に気がついた雪那は、心配そうな顔をした。

でも、自分でもなんで嫌な気持ちになったのか分からない。

他の女にいい態度とるから?

それだけのことで?

それって、まるで私が雪那を好き…みたいな。

「な、なな何でもない!!!」

少し強めに言うと、雪那はくすくすと笑った。

「そんな怒らなくても」

「ふんっ!」

私はそっぽを向いて、ご飯をまた食べ始めた。

その日の夜、私はいつも通りスマホをいじっていた。

SNSを見たりするのはいつもの日課だ。

その時、突然電話がきた。

そこには「非通知」と書かれている。

基本的にそういう電話には出ないんだけど、どうしてか出なきゃいけないような気がして…。

私は通話のボタンを押した。

少しの沈黙の後、スマホからあいつの声が聞こえた。

『初音』

ブチッ。

私はその瞬間通話を終了させた。

息も荒くなって、気分が悪くなってきた。

「なんで…なんで…!!」

まさかあいつだとは思わないじゃん。

やっぱり瑛翔のことも、あいつの耳に入ったんだ。

私があいつをさけて捨てたのに…だからか、恨みでもあんのか?

次はどんな手をうってくるか分からない、だから警戒しなきゃならない。

「とりあえず、風呂入ろ」

どれだけ考えようが分からない。

もう、忘れてしまいたい。

その後も非通知から電話が何度もかかってきたけど、全部無視した。

だってどうせあいつからなんだから。