「さいあく、イヤホン忘れたぁ」


大嫌いな英語の授業前。

いつもならポーチに入っているはずのお気に入りのイヤホンが無い事に気付いて、私は顔をしかめてそう言った。

誕生日に兄がプレゼントしてくれた、最新のワイヤレスイヤホン。
きっと昨日の夜に充電したまま持ってくるのを忘れたんだ。


「うわ、よりによって今日忘れるー?つぎ特英だよ」

いつも一緒にいるクラスメイトの(あおい)が笑う。


嫌いな科目の時はいつも片耳でこっそり音楽を聴いて授業を受けるのが最近の私の常。


特に、特別講師が来て授業を行う『特英』というハードモードの英語は本当に苦手。


「もう寝るしかないかも」

私はガックリと肩を落とし、ドンマイと葵に背中を押されながら、授業がある特別実習室へと向かった。