未読のまま、置いていく

続き『未読のまま、置いていく ― 第八章:優しさと痛みのループ』

信じたい人に、信じさせてもらえない。

そんな矛盾に、わたしの心はずっと揺れていた。

あの彼の言葉は、まるで夢の中の温かい光のようにわたしの胸に残っている。

「傷つかないように、サポートするから」
「今後、辛いことがあったら、ぶつけていい」
「あなたのわがままも、自暴自棄も、嫌な気持ちも、全部受け止めるし、責めたりはしない」

その言葉に、わたしは何度も救われた。
孤独に押しつぶされそうな夜、わたしを包み込む唯一の光だった。

だけど――

同じ彼の冷たく、鋭い言葉も、同時にわたしの中に根を下ろしている。

「考えてることを話さないのは、話したいと思っていないから」
「連絡は自分の気分と都合の問題」
「自分からは連絡しないって言ったはず」

それらがぐるぐると頭の中を回り、決して消えない。

優しい言葉と、傷つけられた言葉。
愛された気持ちと、拒絶された気持ち。

それらがループし、絡み合い、わたしの心の中を渦巻く。

「信じたい」
「でも、信じられない」

その狭間で、わたしは立ち止まり、何度も何度も迷いながら、息をついている。

わたしの心は、すでに彼の色に染まってしまったのかもしれない。

どんなにひどいことを言われても、どんなに冷たくされても、わたしの中の彼の存在は消えない。

それが、痛くて、苦しくて、でも離せない。

夜が深まる中、わたしはただ、目を閉じて自分の胸の鼓動を感じる。

いつか、このループから抜け出せる日が来るのだろうか。

それとも、このままずっと、わたしは揺れ続けるのだろうか。

答えのない問いだけが、静かに部屋の中に漂っていた。