未読のまま、置いていく

続き『未読のまま、置いていく ― 第七章：消えない言葉と静かな電話』

ある夜、久しぶりにネッ友の女の子から電話がかかってきた。
画面に彼女の名前が浮かぶたびに、心臓が早鐘を打つ。

助けを求めたい、でも素直に求められない。
そんな葛藤の中で、彼女だけが唯一、わたしに連絡をくれた存在だった。

「今、大丈夫？」

何度もそう打とうとして、送信を取り消した。
どうしても言葉にできなかった。

けれど、勇気を振り絞って、短く「電話したい」とだけ送った。

彼女からすぐに返ってきた言葉。

「わたしには、連絡してきていいよ」
「裏切らないから」

その言葉には、確かな温かみがあった。
わたしはスマホを胸に抱きしめて、何度も読み返した。

だけど、どこかでわかっていた。
わたしが本当に欲しい連絡は、彼女からではないってこと。

あの友達、彼からのLINEが来ることをまだ、心のどこかで期待してしまっている自分。

その思いが、いつまでも消えずに、胸の奥でざわつく。

あの日、あの言葉。
あの彼が言った冷たくも忘れられない言葉。

「自分からは連絡しないって言ったはず」

その文章が、何度も何度も頭の中で繰り返されて、わたしを締め付ける。

それなのに、男子からの連絡が来ることを、今でもどこかで待っている自分が、心の底から嫌だった。

「どうしてこんなにも、私は弱いんだろう」

そう思うたびに、自分が小さく、壊れていくのを感じる。

でも、電話の向こうから聞こえる彼女の優しい声が、わたしの心の隙間にそっと灯りをともす。

「大丈夫。ここにいるよ」

その言葉だけで、少しだけ、救われる気がした。

だけど、それでも。

わたしはまだ、完全には誰も信じられない。

それが、わたしの今の真実だった。