続き『未読のまま、置いていく ― 第四章:画面の向こうの期待』
学校から帰ってきた部屋は、薄暗くて静かだった。
カーテンの隙間から差し込む夕暮れの光が、ぼんやりと床に影を落としている。
ドアを閉めて、バッグをそっと置く。
わたしの手は、自然とスマホを探し、画面を何度も点けては消す。
「もしかしたら、LINEが来ているかもしれない」
そんな淡い期待を胸に抱いて、何度も画面を見つめる。
でも、待っている通知は一度も鳴らなかった。
前に彼から言われた言葉が、頭の中でぐるぐると回っている。
「自分からは連絡しないって言ったはず」
「連絡は自分の気分次第」
それでも、わたしはなぜか、諦められなかった。
何を期待しているのだろう。
どうしてこんなにも、わたしは彼からの一行のメッセージを待ち続けているのだろう。
胸の奥底で、小さな灯りがかすかに揺れているのがわかる。
それは「わたしのことを見捨てないで」という切なる願い。
こんなにも拒絶されたのに、まだ彼の存在を求めている自分が、どこか怖かった。
スマホの画面に指を触れ、虚空に問いかける。
「なぜ、わたしはここにいるの? 誰かに認められたいの?」
涙がこぼれそうになったけど、頬を伝う前に必死で押し止めた。
こんなに傷ついているのに、わたしはまだ、誰かの言葉に救われたいと思ってしまう。
でもその願いは、あまりに脆くて、割れそうなガラスのようだった。
そしてまた、スマホの画面を見つめる。
いつか、ほんの少しでもいいから、彼からの返信が届くのを待ちながら。
孤独な夜が、静かに更けていく。
