未読のまま、置いていく

続き『未読のまま、置いていく ― 第二章:音のない部屋』

時計の秒針が、カチ、カチ、と響く。
もうすぐ日付が変わる。けれど、わたしはスマホをにぎりしめたまま、布団の中で目を閉じられずにいた。

LINEの画面には、何もない。
既読にもならない、通知も来ない。
その無音が、まるでわたしの存在が「どうでもいい」って告げてるみたいで、怖くて、悲しくて、でもどこにもぶつけられない。

「自分の気分と都合の問題」
あの言葉が、頭の奥で何度もリピートされる。
わたしの気持ちは、そんなにも軽かったのかな。
「相談を聞くのがめんどくさいから、関係を終わらせたいんでしょ」
そう言われたとき、わたしの中で何かがパキッと折れた。

わたしは、面倒だったんだ。
重かったんだ。
そのことを、ちゃんと突きつけられてしまった。

泣きたくても、泣けない。
息を止めるみたいに布団にうずくまりながら、「あのとき話さなきゃよかった」と後悔した。

でも、話さなかったら、わたしはもっと壊れていた。
あのとき、わたしは精一杯だった。
やっと勇気を出して、彼に気持ちをぶつけた。

でもその代償は、これだった。
「連絡はしないよって、最初に言ったはず」
まるで、責任の所在を全部こっちに押しつけるような、淡々とした音のない拒絶。

わたしのせいなのかな。
わたしが、もっと上手く話せていたら。
わたしが、重くなければ。
わたしが、違う人間だったら。

自己嫌悪が、喉の奥まで押し寄せる。
まるで、海に沈んでいくみたいに、わたしの身体は重くなる。

このまま眠って、目が覚めなければいい。
明日が来ないなら、それでもいい。

そんなふうに思ってしまう自分が、また嫌だった。

――ねえ、わたし。
どうして、こんなにも傷つくの?
どうして、ただ「だいじょうぶだよ」って、誰にも言ってもらえないの?