特別続編『裏切りの傷跡』
人の裏切りしか知らないわたし。
小学校の頃から、いじめは始まった。
友達だと思っていた子たちが、こっそり悪口を言いふらした。
登校するのが怖くて、毎朝震えながら教室のドアを開けていた。
ある日、友達と遊んでるときに、ベットボトルをシーソーの上に乗っけて、反対側から、踏んで、ベットボトルを思いっきり飛ばした。
そのベットボトルを私に例えて…。
ストレス発散をしたかったそうだ。
中学校に上がっても、状況は変わらなかった。
置き勉ボックスから、教科書がなくなった…
帰り道、靴は箱へ行くと、靴の中に画鋲が入っていた。
足の裏を刺す痛みよりも、その行為がわたしをどれだけ傷つけたか。
机の上には、「死ね クソ」と、黒いペンで大きく書かれていた。
それを見つけたとき、わたしは初めて、心の奥底から叫びたくなった。
誰にも話せず、ただ黙って耐え続けた。
人を信じることなんて、もうできなかった。
「また裏切られる」
「話しても聞いてもらえない」
そんな絶望が、わたしの胸を締めつけた。
だから、今のわたしも、心のどこかで傷つくのを恐れて、誰かを信じることをやめてしまっているのかもしれない。
でも――
こんな過去があったからこそ、今、誰かの優しさに触れたときに、深く傷つくことも、ほんの少しだけ信じたいと思うこともある。
この傷は、わたしの一部で。
でも、この傷のせいで、わたしは諦めたくない。
裏切りを知ったからこそ、わたしはいつか、本当に信じ合える場所を見つけたい。
続き『裏切りの傷跡 ― そして大人になっても』
それは、大人になってからも変わらなかった。
高校に入ったわたしは、心の中の孤独と不安を埋めるために、助けを求めるように彼氏を作った。
一年生の間に、二人。
半年ずつの関係だった。
一人目は、わたしと同じように心が病んでいて、結局お互いを助けられなかった。
孤独を共有したけれど、深く支え合うことはできなかった。
二人目は、体目的の人だった。
その時は、正直それが快楽だった。
わたしを頼ってくれたことに、どこか喜びを覚えていた。
「必要とされている」
そんな錯覚にすがりついていた。
心の底では、「自分は価値のある人間なんだ」と、確かめたかった。
でも、その関係も長くは続かなかった。
身体だけのつながりは、やがて虚しさに変わっていった。
それでも、わたしはどこかで、誰かに必要とされることの温かさを忘れられなかった。
それは、幼い頃に奪われた信頼の代わりに、傷つきながらも探し続けている光だった。
続き『裏切りの傷跡 ― 信じた先にあったもの』
専門学校に入ってから、わたしはようやく「友達」と呼べる人に出会えた。
自分の過去を話すのは、怖かった。
でも、その人達は、わたしの話をちゃんと聞いてくれた。
「大変だったね」って、優しい言葉をかけてくれて。
体調が悪くなったときも、「大丈夫?」って声をかけてくれた。
わたしは、そこに甘えた。
「この人達なら大丈夫」
「わたしを見捨てない」
そう思ってしまった。
だけど――それは、間違いだったのかもしれない。
ある日、突然、彼女達の態度は変わった。
彼女が言った言葉は、まるで刃物のように胸に突き刺さった。
「不幸自慢してるようにしか聞こえない」
「体調悪いのって、ストレスでしょ? だったら精神科行けば?」
「上から目線の言葉が、前から嫌だった」
「最初は、同情した」
「もう関わりたくない」
冷たく、乾いた声。
通知の文字は、冷たい画面の中で、心を切り裂くナイフになった。
わたしは、また間違えたのだと思った。
信じたこと。甘えたこと。
誰かに心を預けたことが、間違いだったのかもしれない。
過去は、やっぱりわたしを縛りつける。
「また裏切られる」って思っていたはずなのに、それでも信じてしまった自分が、今は情けなくてたまらなかった。
どうして、わたしはこんなにも何度も傷つくんだろう。
どうして、わたしの「大丈夫?」は消えてしまって、わたしの「ごめんね」だけが残るんだろう。
わたしは、ただ、誰かと一緒に笑いたかっただけなのに。
本当の意味で、誰かとつながりたかっただけなのに。
でも、もう――誰かを信じることが、怖くなった。
静かに涙がこぼれた。
音もなく、頬を伝って、机に落ちていった。
それを拭うこともせず、ただ、わたしはその場でうずくまった。
今度こそ、もう立ち直れないかもしれない。
そんな予感だけが、胸を締めつけていた。
『裏切りの傷跡 ― 最後のトドメ』
それでも、わたしはまだ信じたかった。
どれだけ裏切られても、どれだけ拒まれても、
心のどこかでは「この人なら、大丈夫かもしれない」って、思っていた。
だけど――返ってきたのは、あまりにも残酷な言葉だった。
⸻
「根本的に、俺は人を信頼したくない」
「信じてもまた、傷つく気しかしない。めんどくさいって思うこともあるし」
「女子に悩み相談されるの、正直もう疲れた」
「〇〇と関わってるのも……ただ、俺の性格的に、人の話を聞くのが好きなだけだから」
「矛盾してるのはわかってる。でもそれが、俺なんだ」
「マイナスな話ばかり聞くの、もうきつい」
「だから、自分からは連絡しない」
「俺は……関わりたいって思ってない。無理して関わる必要もないと思ってる」
⸻
ただ淡々と並べられたその言葉たちが、ナイフのようにわたしの心に突き刺さった。
“救い”でも“理解”でもなく、ただ距離を置かれる理由の説明ばかりが並んでいた。
彼は続けて、こう言った。
⸻
「男子とワチャワチャしてる方が、気楽で楽しい」
「北海道に来て看護に立ち向かってみたけど……無理だった」
「自分は逃げてるだけだって思ってる」
「向き合おうとしてはいる。」
⸻
助けてほしいって思ってる。
でも、わたしからは離れる。
矛盾してることは、自分でわかってると言いながら、
その矛盾ごと、わたしに突きつけてきた。
――その瞬間だった。
心の奥に最後まで残っていた「信じたい気持ち」が、音を立てて崩れていった。
信じたこと。
期待したこと。
踏み出した一歩。
全部、間違いだったのかもしれない。
わたしはただ、誰かに必要とされたいだけだった。
「一緒にいてもいいんだよ」と、言ってほしかっただけなのに。
わたしはもう、立ち直れない気がした。
その夜、泣き続けた。
涙が止まらず、声も出ないまま、ただ静かに、壊れていった。
「もう、誰にも期待しない」
「もう、誰にも求めない」
そう決めたのに。
それでも、どこかで思っていた。
「誰かに、ただ“疲れてないよ”って言ってほしかった」
「“お前の話、重くないよ”って、笑ってほしかった」
そんな小さな願いさえ、叶えられなかった。
続き『裏切りの傷跡 ― それでも、生きてしまった』
こんなことなら――
高校1年生のとき、止められたあの瞬間に、全部終わらせればよかった。
どうせ、あの時だって、誰も本当の意味でわたしの痛みなんてわかっていなかった。
「生きててほしい」と言った人たちの声が、
いまはもう、どこにも残っていない。
わたしが「死にたい」と言ったとき、誰かが泣いてくれたこともあった。
でも、今となっては、その人たちの姿も、記憶の中で霞んでいく。
だって、今のわたしは、
“そのとき止められて、生き延びてしまった”
そんな自分に、もう意味を見いだせないでいるから。
生きた先にあったのは、また裏切り。
また、拒絶。
また、「面倒くさい」と言われる毎日だった。
誰かにすがっても、
誰かを信じようとしても、
そのたびに突き放されて、静かに心を削られていく。
“誰にも必要とされていない”
その確信だけが、日々積み重なっていく。
「今死にたい」と言ったら、誰かは止めるかもしれない。
でも、それもただの一時的な反応で、
結局は、みんな「その後」のわたしを抱えきれなくなって、離れていく。
わたしの痛みは、「重たい」と言われる。
わたしの弱さは、「迷惑」と思われる。
だったら――
あのとき、終わらせればよかった。
助けを求めたわたしは、甘かったのかもしれない。
信じたわたしは、愚かだったのかもしれない。
期待したわたしは、ただの負け犬だったのかもしれない。
⸻
でも、不思議なことに――
それでも、まだ息をしている自分がいる。
傷つきすぎて、もはや“泣く”ことすらできなくなったはずなのに、
ふとした瞬間に、涙がこぼれることがある。
「どうして生きてるんだろう」
「どうして死ねなかったんだろう」
そんな問いを、何度自分に投げかけただろう。
それでも、今日を終え、
気がつけば、また明日が来てしまう。
わたしは――まだ、生きてしまっている…
人の裏切りしか知らないわたし。
小学校の頃から、いじめは始まった。
友達だと思っていた子たちが、こっそり悪口を言いふらした。
登校するのが怖くて、毎朝震えながら教室のドアを開けていた。
ある日、友達と遊んでるときに、ベットボトルをシーソーの上に乗っけて、反対側から、踏んで、ベットボトルを思いっきり飛ばした。
そのベットボトルを私に例えて…。
ストレス発散をしたかったそうだ。
中学校に上がっても、状況は変わらなかった。
置き勉ボックスから、教科書がなくなった…
帰り道、靴は箱へ行くと、靴の中に画鋲が入っていた。
足の裏を刺す痛みよりも、その行為がわたしをどれだけ傷つけたか。
机の上には、「死ね クソ」と、黒いペンで大きく書かれていた。
それを見つけたとき、わたしは初めて、心の奥底から叫びたくなった。
誰にも話せず、ただ黙って耐え続けた。
人を信じることなんて、もうできなかった。
「また裏切られる」
「話しても聞いてもらえない」
そんな絶望が、わたしの胸を締めつけた。
だから、今のわたしも、心のどこかで傷つくのを恐れて、誰かを信じることをやめてしまっているのかもしれない。
でも――
こんな過去があったからこそ、今、誰かの優しさに触れたときに、深く傷つくことも、ほんの少しだけ信じたいと思うこともある。
この傷は、わたしの一部で。
でも、この傷のせいで、わたしは諦めたくない。
裏切りを知ったからこそ、わたしはいつか、本当に信じ合える場所を見つけたい。
続き『裏切りの傷跡 ― そして大人になっても』
それは、大人になってからも変わらなかった。
高校に入ったわたしは、心の中の孤独と不安を埋めるために、助けを求めるように彼氏を作った。
一年生の間に、二人。
半年ずつの関係だった。
一人目は、わたしと同じように心が病んでいて、結局お互いを助けられなかった。
孤独を共有したけれど、深く支え合うことはできなかった。
二人目は、体目的の人だった。
その時は、正直それが快楽だった。
わたしを頼ってくれたことに、どこか喜びを覚えていた。
「必要とされている」
そんな錯覚にすがりついていた。
心の底では、「自分は価値のある人間なんだ」と、確かめたかった。
でも、その関係も長くは続かなかった。
身体だけのつながりは、やがて虚しさに変わっていった。
それでも、わたしはどこかで、誰かに必要とされることの温かさを忘れられなかった。
それは、幼い頃に奪われた信頼の代わりに、傷つきながらも探し続けている光だった。
続き『裏切りの傷跡 ― 信じた先にあったもの』
専門学校に入ってから、わたしはようやく「友達」と呼べる人に出会えた。
自分の過去を話すのは、怖かった。
でも、その人達は、わたしの話をちゃんと聞いてくれた。
「大変だったね」って、優しい言葉をかけてくれて。
体調が悪くなったときも、「大丈夫?」って声をかけてくれた。
わたしは、そこに甘えた。
「この人達なら大丈夫」
「わたしを見捨てない」
そう思ってしまった。
だけど――それは、間違いだったのかもしれない。
ある日、突然、彼女達の態度は変わった。
彼女が言った言葉は、まるで刃物のように胸に突き刺さった。
「不幸自慢してるようにしか聞こえない」
「体調悪いのって、ストレスでしょ? だったら精神科行けば?」
「上から目線の言葉が、前から嫌だった」
「最初は、同情した」
「もう関わりたくない」
冷たく、乾いた声。
通知の文字は、冷たい画面の中で、心を切り裂くナイフになった。
わたしは、また間違えたのだと思った。
信じたこと。甘えたこと。
誰かに心を預けたことが、間違いだったのかもしれない。
過去は、やっぱりわたしを縛りつける。
「また裏切られる」って思っていたはずなのに、それでも信じてしまった自分が、今は情けなくてたまらなかった。
どうして、わたしはこんなにも何度も傷つくんだろう。
どうして、わたしの「大丈夫?」は消えてしまって、わたしの「ごめんね」だけが残るんだろう。
わたしは、ただ、誰かと一緒に笑いたかっただけなのに。
本当の意味で、誰かとつながりたかっただけなのに。
でも、もう――誰かを信じることが、怖くなった。
静かに涙がこぼれた。
音もなく、頬を伝って、机に落ちていった。
それを拭うこともせず、ただ、わたしはその場でうずくまった。
今度こそ、もう立ち直れないかもしれない。
そんな予感だけが、胸を締めつけていた。
『裏切りの傷跡 ― 最後のトドメ』
それでも、わたしはまだ信じたかった。
どれだけ裏切られても、どれだけ拒まれても、
心のどこかでは「この人なら、大丈夫かもしれない」って、思っていた。
だけど――返ってきたのは、あまりにも残酷な言葉だった。
⸻
「根本的に、俺は人を信頼したくない」
「信じてもまた、傷つく気しかしない。めんどくさいって思うこともあるし」
「女子に悩み相談されるの、正直もう疲れた」
「〇〇と関わってるのも……ただ、俺の性格的に、人の話を聞くのが好きなだけだから」
「矛盾してるのはわかってる。でもそれが、俺なんだ」
「マイナスな話ばかり聞くの、もうきつい」
「だから、自分からは連絡しない」
「俺は……関わりたいって思ってない。無理して関わる必要もないと思ってる」
⸻
ただ淡々と並べられたその言葉たちが、ナイフのようにわたしの心に突き刺さった。
“救い”でも“理解”でもなく、ただ距離を置かれる理由の説明ばかりが並んでいた。
彼は続けて、こう言った。
⸻
「男子とワチャワチャしてる方が、気楽で楽しい」
「北海道に来て看護に立ち向かってみたけど……無理だった」
「自分は逃げてるだけだって思ってる」
「向き合おうとしてはいる。」
⸻
助けてほしいって思ってる。
でも、わたしからは離れる。
矛盾してることは、自分でわかってると言いながら、
その矛盾ごと、わたしに突きつけてきた。
――その瞬間だった。
心の奥に最後まで残っていた「信じたい気持ち」が、音を立てて崩れていった。
信じたこと。
期待したこと。
踏み出した一歩。
全部、間違いだったのかもしれない。
わたしはただ、誰かに必要とされたいだけだった。
「一緒にいてもいいんだよ」と、言ってほしかっただけなのに。
わたしはもう、立ち直れない気がした。
その夜、泣き続けた。
涙が止まらず、声も出ないまま、ただ静かに、壊れていった。
「もう、誰にも期待しない」
「もう、誰にも求めない」
そう決めたのに。
それでも、どこかで思っていた。
「誰かに、ただ“疲れてないよ”って言ってほしかった」
「“お前の話、重くないよ”って、笑ってほしかった」
そんな小さな願いさえ、叶えられなかった。
続き『裏切りの傷跡 ― それでも、生きてしまった』
こんなことなら――
高校1年生のとき、止められたあの瞬間に、全部終わらせればよかった。
どうせ、あの時だって、誰も本当の意味でわたしの痛みなんてわかっていなかった。
「生きててほしい」と言った人たちの声が、
いまはもう、どこにも残っていない。
わたしが「死にたい」と言ったとき、誰かが泣いてくれたこともあった。
でも、今となっては、その人たちの姿も、記憶の中で霞んでいく。
だって、今のわたしは、
“そのとき止められて、生き延びてしまった”
そんな自分に、もう意味を見いだせないでいるから。
生きた先にあったのは、また裏切り。
また、拒絶。
また、「面倒くさい」と言われる毎日だった。
誰かにすがっても、
誰かを信じようとしても、
そのたびに突き放されて、静かに心を削られていく。
“誰にも必要とされていない”
その確信だけが、日々積み重なっていく。
「今死にたい」と言ったら、誰かは止めるかもしれない。
でも、それもただの一時的な反応で、
結局は、みんな「その後」のわたしを抱えきれなくなって、離れていく。
わたしの痛みは、「重たい」と言われる。
わたしの弱さは、「迷惑」と思われる。
だったら――
あのとき、終わらせればよかった。
助けを求めたわたしは、甘かったのかもしれない。
信じたわたしは、愚かだったのかもしれない。
期待したわたしは、ただの負け犬だったのかもしれない。
⸻
でも、不思議なことに――
それでも、まだ息をしている自分がいる。
傷つきすぎて、もはや“泣く”ことすらできなくなったはずなのに、
ふとした瞬間に、涙がこぼれることがある。
「どうして生きてるんだろう」
「どうして死ねなかったんだろう」
そんな問いを、何度自分に投げかけただろう。
それでも、今日を終え、
気がつけば、また明日が来てしまう。
わたしは――まだ、生きてしまっている…
