最終章:心から笑えない、わたしへ
あの日から、時間だけは過ぎていった。
スマホの画面は何度も開いたけれど、そこにあの人からの通知が届くことはなかった。
どこかで期待してる自分が、ずっといた。
「きっと、今は忙しいだけ」
「また、落ち着いたら連絡くれる」
そうやって、何度も自分に言い聞かせた。
でも。
待ち続けていた時間が、じわじわとわたしの心を削っていった。
返信が来ない理由なんて、本当はもうわかっていた。
わたしは、もういらない人間だったんだ。
夜、布団の中で何も見えない天井を見上げる。
そのたびに、ひとつひとつ、思い出が胸に刺さった。
優しい言葉をくれたあの人。
笑い合った日々。
信じようとしたわたしの気持ち。
全部、嘘だったの?
それとも――全部、本当だったけど、わたしが壊してしまったの?
泣いても泣いても、心は軽くならない。
涙の分だけ、現実が冷たくなっていく。
学校では笑うふりをしてる。
友達と話してるふりもする。
でも、心の奥では、ずっと誰にも届かない叫びがこだましてる。
笑えない。
心の底から、もう一度笑える日は来ない気がする。
「楽しいね」って言葉が、自分の口から出た瞬間、それが嘘だと自分が一番わかってしまう。
わたしの中の「生きたい」は、もうどこかに置き忘れてきた。
でも、「死にたい」と思いながらも、生きてしまっている。
心は泣いてるのに、体は呼吸をしている。
朝が来て、また今日が始まる。
ただ、それだけの繰り返し。
助けを求める声は、もう枯れてしまった。
信じる力は、どこかに消えた。
だからわたしは、誰かの優しささえも、疑ってしまうようになった。
このまま、誰の心にも触れられず、ひとりで泣く夜を繰り返すのかもしれない。
きっとこれが、罰なんだ。
信じたこと。
期待したこと。
すがったこと。
全部、わたしの間違いだったのかもしれない。
だから――
わたしは、もう心から笑えない人間になった。
