でも、その前に。
ほんの少しだけ。
何かを確かめるみたいな、静かな視線が向けられていた気がした。
「……?」
気のせい、かな。
「六花、ほら食えよ。それ溶けるぞ」
晴に言われて、手元を見る。
「あ、ほんとだ」
少し形が崩れかけたクレープを、慌てて口に運ぶ。
「次どこ行く?時間的にラストだろ」
千隼が腕時計をちらりと確認しながら言う。
「みんなのクラス行きたい!どんな企画してるの?」
「俺らのクラス、脱出ゲームやってる」
伊織が何気なく言う。
「え、楽しそう!」
「まあまあ本格的だぞ」
「行く!」
立ち上がると同時に、みんなも動き出す。
「でも俺ら、もう答え知ってるからな」
「六花と晴でやれば?」
千隼の一言に、みんなが頷く。
「え、いいの?」
「そのほうが面白そうだし」
にやっと笑われて、ちょっとだけ嫌な予感がした。
「ほら、着いたぞ」
案内された教室の前で、ふと足が止まる。
——あれ。
「……ここ、来たことある」
「は?」
晴が振り向く。
「受験のとき。ここ、この教室だった」
自分でも、少しだけ意外だった。
こんなところで思い出すなんて。
「え、じゃあ——」
「この学校、受けたんだよね」
「で、落ちたんだろ?」
にやっと笑いながら、軽く煽ってくる。
「なにそれ」
思わず眉をひそめる。
「いや、その感じだとそうかなって」
「決めつけひどくない?」
「図星?」
