私は晴を見る。
「……そんな感じ?」
「普通にしてるだけだ」
直樹が真顔になる。
「六花」
「ん?」
「冗談抜きで言う」
「?」
少しだけ間を置いて。
「晴、女子から恨み買うタイプだから」
「ちょっと」晴が止める。
「いや事実」
「晴本人が一番無自覚で」
「深く関わらないから、余計に女子は燃える」
「で、そこに」
魈が続ける。
「今日、六花が現れた」
「……あー」
ようやく状況を飲み込む。
「私、妬まれてる?」
「多分な」
「やだなそれ」
思わず声が出る。
「六花、背後には気をつけろよ」
「殺させるなよ、晴」
「言い方!!」
晴が眉をひそめる。
「六花、気にしなくていい」
「いや、晴はいいかもだけど」
「俺が悪いみたいじゃん」
「悪いとは言ってないけど!」
でも。
晴が、少しだけ私の前に出る。
自然に、盾みたいに。
「……」
胸の奥が、変に静かになる。
「ほら」
晴がパンフレットを指す。
「次、展示棟行くぞ」
「あ、話逸らした」
「腹減ったらキッチンカーな」
「はいはい」
視線はまだあるけど。
でも。
知らない世界。
騒がしい校舎。
非日常の空気。
その中心で。
「……まあ、いっか」
私は小さく呟いた。


