夜風が首筋をなでる。
いつもは気持ちいいはずなのに、今は背中がざわつく。
「なぁ」
突然、後ろから声をかけられた。
振り向くと、暗がりの中から歩いてくる人影。
さっきの男?
いや違う。
深く被った帽子からちらっと覗く目元の鋭さは、どこか獣みたいで――
「誰?」
あれから時間はまだほんの少ししか経っていない。
警戒心剥き出しになるのは仕方がないと思う。
「海月のもんだ。さっきの、見てた」
“海月”
ここら一帯で名を馳せる不良集団、いわゆる暴走族。
「……つけてたの?」
「違ぇよ。偶然だ。でも――あいつら、ただのナンパじゃねぇ。動きが妙だったろ?」
言葉に、ドクンと胸が跳ねた。
「キミがやったのは正解だった。けど、お前自身も気づいてるんだろ?普通じゃねぇって」
「……」
「だったら話、聞いてみねぇか?」
彼は真っ直ぐに私を見た。
その目は、どこか懐かしい感覚を呼び起こした。
普通じゃない私を、否定しない目。
「動き、洗練されてた。無意識で出せるレベルじゃねぇ。センスあるよ」
冗談じゃなく、まっすぐに言ってきた。
「……勧誘?」


