漂う花は、還り咲く


伊織の声が、少し震えていた。

頭の中が、一気に回り出す。

私が立ってたところ
待ってたところ
殴ったところ
倒したところ

――全部。


「……見られてた、ってこと?」

喉が、からからになる。

勝ったとか。
強くなったとか。

そういうのが、一気に遠くなる。


「たぶん、六花を狙ったわけじゃない。

今日路地裏に行ったのも、六花があいつらを倒したのも偶然だ。

ただ。今日のことがカメラに残ったのも、誰かが何かの目的を持ってカメラを設置したのも事実だ。」


千隼が、カメラから目を離さずにそう言った。


「六花」

名前を呼ばれて、顔を上げる。

「今日のこと」

晴は、私の目をまっすぐ見る。

「もう、“なかったこと”にはならない」


胸が、きゅっと縮む。

「……私、やばい?」

その質問は、自分でも驚くくらい、素直だった。

晴は、一拍置いてから言う。


「やばくなるかどうかは――」

私の肩に、手を置く。

さっきと同じ。

逃げ道を塞ぐみたいで、でも今度は、守る位置。


「俺たち次第だ」

その言葉で、不思議と、恐怖が少しだけ引いた。


私は、もう一度路地裏を見る。

さっきまで、戦場だった場所。

ここから、何かが変わる。

そんな予感が、
はっきりと胸に残った。