からかわれてるのに、なぜか嫌じゃなかった。
晴の背中は、まだ温かい。
「……心配、してくれたんだ」
ぽつっと言うと、一瞬だけ、周りが静かになった。
「当たり前だろ」
凛月が、少しだけ真面目な声で言う。
「一人で行かせるわけない」
胸の奥が、じわっとする。
私は、晴の服をきゅっと掴んだ。
「……ありがと」
誰に向けた言葉かは、分からない。
「それで?」
千隼が、遠くで倒れている相手たちの方をちらっと見る。
「全部……六花?」
「……うん」
小さく答えると、一瞬、全員が黙った。
「……マジか」
「一ヶ月、だよな?」
「成長、見せつけすぎ」
その言葉に、嬉しいより先に、少しだけ怖くなる。
私、ここまで来ちゃったんだ。
晴が、ふっと息を吐いた。
「でもな」
低い声。
「無茶は、無茶だ」
私は、背中に額を預ける。
「……反省は、してる」
「ならいい」
あ、いいんだ?
「次も、行く気だろ」
図星だった。
黙っていると、晴は歩きながら続ける。
「行くなら……今度も隣に立つ」
それは、約束みたいな言い方だった。
私は、目を閉じる。
お腹は、まだ痛む。
体も、限界。
でも。
次も、行けるかもしれない。
そう思ってしまう自分がいて、少しだけ、怖くて。
でも――
晴の背中が、そこにある限り。
私は、また立てる気がした。


