持ち上げられる。
軽々、とは言えないけど、
ちゃんと、しっかり。
「……重いでしょ」
「んなわけ」
その言い方が、乱暴なのに優しくて。
揺れる視界。
晴の背中の体温。
さっきまでの緊張が、
少しずつ、ほどけていく。
「……怖くなかったか?」
一拍、間があって。
「怖かった」
正直な気持ちすぎて、胸が少しだけ苦しくなる。
「だよな。でも」
晴は、歩きながら続ける。
「止める気は、なかった」
その一言で、目の奥が、熱くなった。
私は、晴の背中に額を預ける。
「……ありがとう」
「何が」
「……間、作ってくれて」
「それが役目だったから」
ぶっきらぼうなのに、
否定しない。
私は、ゆっくり息を吐いた。
「ねえ」
「なんだよ」
「……私、ちゃんとやれた?」
晴は、少しだけ歩調を落とす。
「完璧だった」
その声が、やけに近くて。
私は、目を閉じた。
まだお腹は痛い。
体も、限界。
でも。
背中は、あったかくて。
私は、もう大丈夫だって思えた。


