漂う花は、還り咲く


「六花おつかれ!」

ソファに身を投げ出した私に、晴がコップを渡してくれる。


「ありが──!?」

水だと思って飲んだのに、まさかのよく分からない味付き。

正直、全く美味しくない。

よく見れば色も茶色っぽくて、粉っぽくて、一瞬毒かと疑った。


でも心配そうに私を覗き込む晴からは、悪意は何も感じられない。

じゃあなんなの、これ。


「あ、もしかして六花って初プロテイン?」


プロテイン…

あの、スポーツ選手が筋肉つけるために飲むやつか。


「水かと思ったじゃん!言ってよー!飲むの初めてだし!」

「ごめんごめん。でも頑張って飲めよ。筋肉痛早く治るから。」


「うぅ…」


勢いで、感情を無にして喉に流し込んだ。

にいっと笑う晴を睨みながら。


「……まずい」

正直な感想を言うと、晴は苦笑い。

「だよな。俺も最初そうだった」

「じゃあなんで人に飲ませるの……」

「六花、今日ほとんど食べてないだろ」


結翔の言葉に、ぎくっとする。

図星を突かれたみたいで、コップを持つ手に力が入った。


「別に……お腹空いてなかったし」

「それで走るから、そうなるんだよ」


晴はため息をついて、私の隣に腰を下ろす。


「頭痛いって言ってたし。手も、さっき震えてた」


……見られてた。


何も言い返せなくて、黙ってコップを見つめる。


「無理にいっぱい食えとは言わないけどさ」


結翔は、少しだけ声を落として言った。


「倒れられるのは、俺らが困る」

その言い方がずるくて。


「もうちょっと食べるようにする。」


そう言いながら、もう一口だけプロテインを飲んだ。

相変わらずまずいけど、さっきよりは少しだけマシな気がした。