漂う花は、還り咲く




次の日の放課後。

今日もバイト終わりに倉庫に来た私は、さっそく千隼の考えてくれた特訓メニューを前に唖然としていた。


「これ、一日でするの…?」

「あぁ。昨日気合入ってたし、もっと増やそうかとも思ったけど、凛月がこれくらいにしとけって」


「ははは…」


笑顔が引きつってるのが分かる。


いや、だってさ?

まだ全部は見てないけど、一番上だけでも腹筋100回って…

その下には背筋100回


腕立て伏せにプランク、階段ダッシュ。


私、生きて帰れないんじゃ…


「さ、すぐ始めよう。帰るの遅くなるぞ」


パンパンと手を叩いてこの場を離れた千隼の背中を呆然と見送り、ちらっと周りのみんなを見てみる。


期待してた。

ちょっとは哀れんでくれてるかなって。


でも目に映ったのは、さも当然のような顔でテキパキと用意を始める結翔、伊織。


特別なことなど何もないように、私に背を向けてゲームを続ける晴。


いつものように起きているのか寝ているのか分からない凛月。


千隼がタブレット片手に近づいてくる。

「昨日の映像見返しておいた。六花、悪くはない。だけど、腕力で勝負するな。お前は体重とタイミングで勝負するタイプだ」


「……体重と、タイミング?」


「そう。力で殴るんじゃなくて、流れで崩すんだ」

そう言って、実際に手を取って体の重心を教えてくれる。


千隼の指導は的確で、分かりやすい。


「六花、こっちもやるぞ!」

直樹がロープを差し出してくる。縄跳びだ。

「え、これも?」


「体力つけろ!攻撃だけできても息切れしてたら意味ねぇだろ」


「ぐぅ……」

確かに反論できない。

縄を回す。足が重い。筋肉痛が、まだ完全には消えていない。


でも、それを見ていたメンバーが代わる代わる声をかけてくれる。


「その調子だ六花!」
「リズム崩すな!」
「うわ、意外と続いてんじゃん」


励まし半分、からかい半分。

でも、不思議と苦しくない。むしろ、笑えてくる。


気づけば汗が頬をつたって、息も荒い。

それでも――心地よかった。


「……はぁ、はぁ……」

「よし、今日はここまでだな」


結翔の声で、みんなが一斉に動きを止める。


「六花、よくやったな」

晴がニッと笑って言う。

昨日の「無理すんなよ」という言葉を思い出して、胸が少しだけ熱くなる。


痛む筋肉を抱えながらも、確かに一歩ずつ前に進んでいる。

そう思えた瞬間だった。