寝返りひとつで「いった……」と声が出てしまうくらい。
それでも、痛みの奥から浮かんでくるのは、昼間の光景だった。
――私の動きの的確な指摘。
――広場で豪快にお菓子を広げた下っぱたち。
――魈の、まっすぐで少し怖いくらいの眼差し。
――そして、やたら勘の鋭い晴。
ババ抜きで負け続けて、みんなに大笑いされたことも。
思い出すたびに、くすっと笑いが漏れる。
「……楽しかったなぁ」
声に出した瞬間、胸の奥がじんわり温かくなった。
昨日までなら考えられなかった。
“海月”なんて怖い不良グループの輪の中に入って、あんなふうに笑ってる自分。
痛みに顔をしかめながらも、心の中は不思議と落ち着いている。
筋肉痛で体はきついはずなのに、妙な安心感に包まれていた。
――ここに来てよかったのかな。
そんなことを考えたまま、瞼が重くなっていく。
湿布のひんやり感と、昼間の笑い声を思い出しながら、私はそのまま夢の中へ落ちていった。
気づけば私は、見知らぬ草原の真ん中に立っていた。
手には、温もりがある。
小さな指。細い手首。
左右を見れば、子供たちが何人も、互いの手をしっかり握り合って輪になっている。
笑い声がする。
楽しげに走り回る声が、どこかで聞こえる。
けれど、顔は霞んで見えない。
名前も分からない。
なのに――懐かしい。
胸の奥に響く温かさは、どうしようもなく知っているもののようで。
この夢、久しぶりだ。
少し前までは時々見ていたのに、最近はすっかり忘れていた夢。
誰かの記憶なのか、自分のものなのかも分からない。
まるで知らない誰かの過去を、こっそり覗いているみたいな、不思議な感覚。
その輪の中にいることが、なぜだかとても心地よくて――。
ずっとここにいたいな。
そう思った瞬間。
ふっと視界が暗転した。
「……っ」
目を開けると、いつもの天井。
掛け布団の重さがやけに現実的で、夢の余韻をあっさり押し流していく。
「……やっぱり、ここで終わっちゃうんだね」
見たくて仕方ないのに、続きを見せてくれない夢。
いつも同じ場所で途切れて、そこから先は分からない。
気になって仕方ないのに、自分の意思でどうにかできるものじゃない。
胸の奥に残った温もりだけが、確かに存在していて――。
私は小さく息をつき、再び瞼を閉じた。


