「六花、トランプしよーぜ」
「するする!」
晴から逃げるように、そそくさと退散する。
変なところ鋭いのなんなの?
…そんな私を、晴が真剣に眺めてたことなんて、全く気が付かなかった。
「うわぁ負けたー」
「六花よっわ」
あれから三戦。
結果は三回とも、ババは私の手元に残ったまま。
「六花、別に顔に出るわけじゃねぇのにな」
「魈が強いんじゃね?」
「確かに、いつも魈勝ってるよな」
言われてみれば、確かに。
毎回、私のカードを抜くのは魈で。
じっと目を見つめられて、綺麗にジョーカーを避けられてた気がする。
一度ジョーカーが来たら、それはもう消えない。
そう気づいても、どうしようもないんだよね。
結局その後の勝負でも対処法は浮かばず、一度ババを引いたら負け確定だった。
「やっぱ魈強すぎ」
「次からお前審判な」
「なんでだよ」
笑い声が広がる。
10人くらいで円になってやったババ抜きは、施設にいた頃に戻ったみたいで、ちょっと懐かしかった。
わいわい盛り上がっている輪の外から、ふっと影が落ちる。
振り向けば、晴が立っていた。
「六花」
「ん?」
「今日は……筋トレしねぇの?」
近づいてくる晴の目は、さっきまでのふざけた顔じゃなくて、少しだけ真剣。
「……うっ」
思わず変な声が漏れた。
苦笑いしながら、正直に答える。
「いや、ちょっと今日は……筋肉痛がすごくて」
「筋肉痛?」
「歩くのもきついくらい。笑えないでしょ」
肩をすくめてみせると、晴が口の端を上げた。
「はは、だっせー」
「ひどっ」
「でも、無理すんなよ」
小声でぽつりと言い残して、晴はまたみんなの輪に戻っていった。


