漂う花は、還り咲く


「こういうのはタイミングと情報が命なんだよ。数字は裏切らないからな。

例えば…海外の市場が開く瞬間ってのがある。そこはな、サッカーの試合でキックオフした瞬間に、全選手が同時に全力疾走するみたいなもんだ。」


「え…そんな一気に?」


「そう。閉まってる間にも世界じゃニュースや経済発表があって、それが一気に反映される。注文が殺到して、値段が跳ね上がったり急落したりするんだ」


千隼は自分の指をパチンと鳴らした。

「ほんの数秒、タイミングがずれるだけで、勝つか負けるかが決まる。逆に言えば、その瞬間を正確に読めるやつは、短時間でとんでもない額を稼げる」


「…それ、普通の人には無理じゃない?」

「無理だな。普通はな」


千隼は言いながら、横目で画面の数字を確認し、素早くクリックを一つ入れる。数値が瞬く間に切り替わり、グラフの線が跳ね上がった。


「え、今なにしたの?」

思わず声に出してしまう私に、千隼はニヤリと笑って答えた。


「今のは注文を入れたところだよ。開く瞬間を狙って、大きく動きそうな銘柄に一気に賭ける感じ。

うまくいけば利益が跳ね上がるけど、タイミングを逃すと損も大きいから、かなり神経使うんだ。」

「へぇ…なんかゲームのコンボ技みたいだね」

「まあ、そうだな。瞬間的な判断力が命のゲームみたいなもんだよ。」


そう言って、再び画面に向き直る横顔は、いつものゆるい雰囲気とは全く違っていた。

淡々としていて、迷いがなくて――まるで別人みたい。

私は、さっき晴の強さに驚いたときとはまた別の感情で、心がざわつくのを感じていた。

ここにいる人たちは、本当に普通じゃない。