漂う花は、還り咲く

無愛想だけど、どこか優しいその声に、心が温かくなる。

ちょっと恥ずかしくて、目を逸らす。

そのまま話しかけるタイミングを失って、お互い黙って歩いた。


「そろそろバイク乗るか」

「うん、ありがとう。」

少し歩くのに疲れてきた頃。

ヘルメットを手渡されて、素直にまたがる。

背中越しに感じる結翔の体温に、心が少しだけ落ち着く。


「落ちないようにしっかりつかまれよ」

「わかってるって」


バイクが静かに動き出す。

暗くなりかけた街路を、風を切って走る。

結翔の運転は荒くなくて、でも力強い。


「やっぱり、こうやって走るのは気持ちいいな」

彼の声が前からから聞こえてきて、思わず笑う。

「そうだね。…なんか、全然怖くないよ」

「それはよかった」

信号で止まったとき、結翔がちらっと振り返った。

「ここから倉庫まではそんなに遠くない。もうすぐ着くよ。」

「りょーかい」

またバイクが走り出す。

街灯の光が揺らめいて、夜の空気が肌にひんやり染みる。

ほどなくして、倉庫の前に着いた。

結翔がバイクを止めて、ヘルメットを外す。


「おつかれ」

「ありがとう」


声をかけあって、2人で倉庫の扉を押し開ける。

今日の疲れが少しだけ和らいだ気がした。