「もー!ちゃんと前見てよ~、轢かれたらアイスどころじゃないよ!」
「あっぶなー!てかごめん!考えごとしてた~!」
「六花に“考えごと”って概念があるの初めて知ったんだけど?」
「こらぁ!!一応あるわ!!」
私は手を挙げて、笑いながら小走りで歩道に戻った。
そして、ふと思った。
……やっぱり、ちょっとだけ、私はみんなとは違うのかも
でも、それも別に悪くないか。
だって、こうして今日も笑ってるし。
明日も、たぶん、同じように笑ってると思うし。
――まさか、明日が“同じ”じゃなくなるなんて、このときの私はまだ知らない。
夕焼けが差し込むバスの中、窓ガラスに映る自分の顔をなんとなく眺める。
ヘラヘラ笑ってない、口角の上がってない私の顔。
疲れたってほどじゃないけど、少しだけ静かになりたくなる帰り道の時間は、けっこう好き。
バスを降りてからは、少しだけ急な坂道。
住宅街の端っこ。アパート二階。
錆びた階段をギシギシ鳴らしながら上がって、鍵を開ける。
ガチャ。
「……ただいまー」
返事は、もちろんない。
一人暮らしにしてはけっこう広めの1K。


