何も言わずに荷台のところに手をかけると、結翔がさらっと一言。
「落ちないようにちゃんと座れよ?」
「はいはい……」
言われるがままに、そろっと後ろにまたがる。
結翔が一歩進むたびに、わずかに伝わる振動がくすぐったい。
「……ごめんね、わざわざ」
「別に。慣れてるし」
「迎えに来るとか、めっちゃ優しいね」
「……だから言ったろ、歩かせる方がめんどいって」
「ふふ、はいはい」
家までの道を、ゆっくり進む。
道沿いの塀の影が伸びていて、涼しい風が吹き抜ける。
なんてことない帰り道なのに、胸の奥があたたかくなる。
「……ほんと、筋肉痛やばかった」
「明日も続くぞ、多分」
「やだなー……でもちょっと、がんばってよかったかも」
自分で言いながら、ほんの少し照れる。
結翔は返事をしなかったけど、その横顔はどこか穏やかに見えた。
家の前まで来たところで、私はそっとバイクを降りた。
「ちょっと荷物置いてくる。……すぐ戻るから、待ってて」
「おう」
その返事を聞いてから、私は急ぎ足で玄関へ向かった。
さっきまでの筋肉痛も忘れるくらい、体が軽かった。


