漂う花は、還り咲く

坂を下って、細い道を曲がったところで――

「……え」

見覚えのあるバイクが止まっていた。

黒とシルバーの車体。その横に立ってるのは、言うまでもなく――結翔。

ヘルメットは持ったままで、スマホもいじらず、ただバイクのシートに片手をかけて待っていた。

日差しが西に傾いて、影が長く伸びてる。


「……ほんとに来てる」


小声でつぶやきながら近づくと、結翔がゆっくり顔を上げた。


「おう」

たったそれだけ。


なのに、また心臓が勝手に跳ねる。


「その……バイクで来たの?」

「当然。六花、筋肉痛ひどいだろ」

「いや、でも乗るのはさすがに……」

背中の痛みがふとよぎって、黙る。

たしかに今、普通に歩くのもけっこうキツい。


「乗れ。押してく」

「え、押すの?」

「家まで坂だしな。エンジンかけるより静かだろ」

「……そっか、ありがと」


なんだろう、優しいわけでもないのに、ちゃんと優しい。