でも今日は、全然違う。
階段を上るのはつらすぎるし、歩き方も変だったんだろう。
太ももは重く、膝に手を添えないと安定しない。
座るときも、無意識に顔をしかめてしまっていた。
「え、いま……顔ゆがんでたよな?」
「椅子、めっちゃゆっくり座ったし……」
「マジで筋肉痛?」
誰かが冗談っぽく言う。
「昨日、フルマラソンでも走ったん?」
「それか山で修行とか?」
「いや、ヤンキーと喧嘩したんやろ」
笑いが起きるけど、私は苦笑いで誤魔化すしかなかった。
「ちがっ……普通に筋肉痛……」
語尾が震えてたの、気づかれてなきゃいいけど。
そして、体育の時間。
……よりによって今日、持久走って
先生が「ペース落としていいから、三周ね」と言ったとき。
クラスは「だる〜」「まじか〜」と、いつものように騒ぎながらトラックへ向かっていく。
私もその中に混じった。
けれど――
走り出した瞬間、体がまるで別物になったみたいだった。
腕が振れない。太ももが持ち上がらない。
背中に響く痛みにびくついて、足の出し方すらぎこちない。
「ちょ、六花?」
いつも一緒に喋りながら走る友達が声をかけてくる。
「…なに?」
正直、走るので精一杯。声を出すのもつらい。
「あ、いや、ごめん。喋らなくていいから。
でもあの六花がねぇ…。やってます感だけ出してた六花が…」
確かに、いつもは軽く走ってるけどそれでもクラスの女子の3番目くらいには入れてた。
なのに今日は、明らかに遅い。
腕の振りもバラバラで、スピードは人並み以下。
みんなの後ろのほうで必死に呼吸を整えるのに精一杯だった。


