漂う花は、還り咲く


「六花って、好きな人とかいないの?」

「え、なにその唐突なぶっこみ」

「いや、ちょっと気になっただけ~!だっていつも誰とでも仲良しじゃん」

「んー、恋ってどうなったら始まるんだろうね?」

「うわ、名言っぽい風に言って逃げたなー!」

「だってほんとに分かんないもん。ていうか私、今はアイスとベビカスで満たされてるから恋なんてなくて平気〜」

みんなは笑うけど、本心だった。

恋って、するものなのかな?されるもの?

そもそも、誰かを“特別”って思ったこと――あるっけ?

…ないな

それすら、別に変だとは思ってなかった。

だって、私は今、楽しいから。

毎日笑ってて、友達もいて、誰かに何かを求める理由が、ない。



……ただ。

頭のどこかで、ほんのちょっとだけ、今の自分が演じてるだけなんじゃないかって感じるときがある。

たとえば、こうして笑ってるとき。

みんなが本気で笑ってる中で、自分だけ、笑うタイミングを測ってるようなとき。


それはすぐに消えて、またいつもの私に戻るんだけど――


…ふと、店の窓に映る自分を見て思った。

昔のこと、私はどこまで知っているんだろう。

6歳より前の記憶は、いまだに真っ白。

今の私の日常がいつから始まったものなのか、よく分からない。


「ちょ、六花、危ないってば!」

「へ?」


友達の声で我に返ると、車道の端ギリギリまで出ていた。