「…なんで最後、手加減したの?」
少しトゲのある言い方になってしまった。
でもそれだけ私は本気だったし、どうせ負けるなら最後まで全力でやらせてほしかった。
「六花、俺が最初に言ったこと忘れたのか?
これは、勝つか負けるかじゃない。どれだけお前自身を見せれるかだ。俺は、お前が力を発揮できるように、予測しやすい攻撃を選んだ。それだけのことだ」
あ…そっか。
私がみんなに認めてもらえるように、私が一番自分らしく戦えるように。
凛月は、ちゃんと考えてくれてたんだ。
たしかに最初に言っていた。勝ち負けじゃないって。
忘れてたのは私の方だった。
勝負にこだわって、結果に振り回されて……勝手にイラついてただけ。
「ごめん。」
「いや、いい。それだけ本気で向き合ってくれたならそれで。」
そう言って微かに笑う凛月を見て、これが“悔しい”ってことなんだと、直感的にわかった。
こんな感情初めてで、どうやって落ち着けたらいいのか分からない。
胸の奥が、ずっと熱いままだ。
出来るって思ってるのに、体がついてこない。
そのじれったさが、苦しかった。
そのとき、ふと結翔が時計に目をやって口を開く。
「そろそろ送るよ。六花、今日はもう動けねぇだろ。」
「あ、うん。ありがとう。」
立ち上がろうとした瞬間、足に軽く力を入れただけでガクンと膝から崩れた。
「っと…」
無言で差し伸べらた結翔の手を、素直に掴む。
その手は固くて分厚くて、これまで結翔がどれだけの時間を‘’本気”に費やしてきたのかが分かる。


