結翔がうなずく。
「でも、なんか、わかるかも。俺も昔、同じこと言ってた」
「結翔も?」
「ああ。たまたま凛月に拾われて、ここに流れ着いた。……最初は、何もないと思ってたけど」
「今は?」
「今は、まあ……それなりに居場所、できたかなって思ってる」
その横顔にはどこか、過去を知ってる人間だけが持つ静かさがあった。
一人きりで生きてきた時間。
誰にも頼らず、ただ傷つかないように息をひそめてきた日々。
結翔の言葉の端々には、それがにじんでいた。
だからこそ、私はこの人の言葉が、すとんと胸に落ちるんだと思った。
「……ねえ」
気づけば私は、ぽつりと口を開いていた。
「もし、私が昔……すごく悪いことしてたとしても。忘れてるだけで、人を傷つけたことがあるとしても。
ここにいていいって、思ってくれる?」
結翔は、一瞬だけ驚いたように私を見て、すぐにその目を細めた。
「……そん時は、俺らが止めるよ。全力でな」
「えっ……」
「俺も昔…取り返しのつかないことやったと思ってた。でもそれって、ひとりで考えてたから余計に重くなってたんだと思う。
もしお前がまた間違えそうになったら、全力で止めて、引き戻す。海月はそういう場所だ。」
それは――優しさでもあり、覚悟でもあった。
私は目の奥が熱くなるのを感じて、俯いたまま小さく笑った。
「……そっか」
たぶん私は、まだ全部思い出せないし、自分の正体も分からない。
でも、ここにいてもいいって、誰かに言ってもらえたこの嬉しさだけは、ずっと胸の奥に残り続ける気がした。


