「やめろって」
「えー、いいじゃん」
くすくす笑いながら、もう一回だけ軽く触れる。
「ほんとにやめろ」
そう言いながらも、完全には振り払わない晴に、くすっと笑う。
「はいはい」
素直に手を引っ込めると、少しだけ気まずそうに視線を逸らされた。
その横顔が、さっきよりもずっと柔らかく見える。
「……ガキ扱いすんな」
ぼそっと小さく呟く。
「してないって」
「してるだろ」
「してないよ」
軽く言い合いながら、立ち上がる。
「帰ろっか」
「ん」
並んで公園を出る。
街灯がぽつぽつと灯り始めて、昼間とは違う空気に変わっていた。
さっきまでの沈黙とは違う、なんとなく落ち着く静けさ。
「……でもさ」
歩きながら、ふと晴が口を開く。
「六花って、変なとこ見てるよな」
「なにそれ」
思わず笑う。
「褒めてんの?」
「微妙」
「ひど」
くすくす笑いながら、少しだけ前を歩く。
「でも」
一歩先に出たまま、振り返らずに言う。
「ちゃんと見てるってことでしょ?」
少しだけ間があって。
「……まぁな」
小さく返ってくる。
その声が、なんだか少しだけ優しくて。
「でしょ」
満足げに笑う。
しばらく歩いて。
交差点の手前で、ふと足を止める。
「ここで大丈夫」
「送る」
即答だった。
「いや、いいって。すぐそこだし」
「暗いし」
「大丈夫だってば」
「……」
少しだけ不満そうな顔。
でも、無理にとは言わない。
「じゃあ、またな」
「うん、またね」
軽く手を振る。
背を向けて歩き出して——
ふと、振り返る。
まだそこにいる晴と目が合った。
「なに」
少しだけ照れくさそうに言われる。
「なんでもない」
小さく笑って、もう一度手を振る。
今度こそ前を向いて、歩き出す。
背中越しでも分かるくらい、さっきよりも軽くなった足取り。
……よかった。
胸の奥に残っていた小さな引っかかりも、いつの間にか薄れていた。
今日のことを思い返しながら、ゆっくり帰り道を進む。
にぎやかで、ちょっと不思議で。
でも——
ちゃんと、楽しかった一日だった。
