「……まあな」
否定は、しなかった。
それだけで、少しだけ安心する。
また、静かな時間が流れる。
さっきよりも、少しだけ心地いい沈黙。
風が吹いて、木の葉がかすかに揺れる。
「六花」
不意に、名前を呼ばれる。
「ん?」
振り向くと、晴がこっちを見ていた。
「……ありがと」
少しだけ照れくさそうに、視線を逸らしながら言う。
一瞬、きょとんとして——
すぐに、ふっと笑う。
「どういたしまして」
そう返して、また前を向く。
少しだけ沈黙が落ちる。
隣にいる晴は、さっきよりも力が抜けたみたいに、背もたれに体を預けている。
その横顔を、こっそり見る。
——なんだか。
いつもより、少しだけ幼く見えた。
強くて、口も悪くて、遠慮なくて。
どっちかっていうと振り回されることのほうが多いのに。
今は、少しだけ頼りなくて。
年相応、というか。
「……中学生なんだなぁ」
ぽつりと、思わず口に出ていた。
「は?」
すぐに睨まれる。
「あ、いや、なんでもない」
慌ててごまかすけど、もう遅い。
「今なんかバカにしただろ」
「してないしてない」
くすっと笑いながら、軽く首を振る。
「ちょっとだけ、可愛いなって思っただけ」
「は?」
今度は、さっきより分かりやすく嫌そうな顔。
でも、その反応がまた面白くて。
「なにそれ、失礼すぎだろ」
「ごめんって」
謝りながらも、全然反省してない声になる。
少しだけ、距離を詰める。
「でもさ」
そっと、晴の頭に手を伸ばす。
一瞬だけためらってから、くしゃっと軽く撫でた。
「がんばってるね」
自分でも驚くくらい、自然に出た言葉だった。
「……っ」
晴がぴたりと固まる。
「は、なにしてんだよ」
少し遅れて、手を払われる。
でも、その動きはさっきまでみたいに強くない。
