漂う花は、還り咲く


しばらく、静かな時間が続いた。


隣にいる晴は、何も言わないまま俯いている。


さっきよりも、少しだけ空気がやわらいだ気がした。

……ちょっとだけ、楽になったのかな


そんなことを思いながら、横顔をそっと盗み見る。


「……ね、晴」


少しだけ間をおいて、声をかける。


「ん?」

短い返事。


さっきよりも、ほんの少しだけ力が抜けている気がした。


「さっきのさ」

言いかけて、少し迷う。


どこまで聞いていいのか、分からない。

でも——


「無理に話さなくていいからね」


そう言ってから、小さく笑う。


「ただ、隣にいるくらいならできるし」


視線は前に向けたまま。


わざと、軽く。

重くならないように。


少しの沈黙のあと。

「……別に、大したことじゃねーよ」


ぽつりと、晴が言う。


「ちょっと、距離できただけ」


それだけ。

詳しくは、何も言わない。


でも。


それで十分だった。


「そっか」

短く返す。


それ以上は、聞かない。

聞かなくても、なんとなく分かる気がしたから。


「でもさ」

少しだけ、言葉を足す。


「寂しいよね」

その一言に、晴が小さく息を吐いた。