密告


 鈴奈は大学を卒業し、進学塾の英語の先生として、中高生に教えている。

 貴文は、IT関係の仕事に着いていた。
お互い仕事が忙しくなり、学生の時のようには逢えなくなっていた。

そんな中での友人からの密告の電話が……。

「もしもし鈴奈、貴文君が女の人と渋谷の街を歩いていたわよ」

「なんか、手なんか繋いじゃって、仲良さそうだったわよ」

「それっていつの事?」と鈴奈。

「5月20日頃かなぁ…」

「余計なお世話とも思ったけれど、私の性格上黙っているのが、辛くてーーー」

と、大学時代の友人の流川莉乃からの電話だった。

『ほんとに余計なお世話よ』と思いながらも、突然のことで、どう受け止めていいのか分からなかった。

「ほんと? 信じられない……、人違いではないの?」

と、友人に返すのが精一杯だった。

「貴文さんに確かめてみる必要があるんじゃないの?」

「あっ、これも余計なお世話よね」

「そうね……、彼と話してみるわ」と言って、電話を切った。