捨てられない女


 鈴奈はモテた。
髪はロングでサラサラ、顔は美人の仲間とも言えるが、愛嬌のある顔付きでもある。

ニコッと笑えば、その笑顔に惹かれる男性は多いのではないだろうかーー。
 
淡いピンク色の小さな唇は、愛らしい。

男女平等が騒がれているご時世で、どうかと思う人もいるだろうが、合コンの時など、サラダが運ばれて来ると、鈴奈はさり気なくサラダを小皿に取り分ける。
男に媚びることなく。

そんな気遣いにも男性は惹かれてしまうのだろうか……。

とにかく、彼女の周りにはいつも笑顔があった。

  完璧に見える鈴奈だが、彼女には唯一の欠点があった。

 鈴奈は大学入学と同時に、親の援助で、1LDKのマンションに住んでいる。

最初は広いと思っていたが、今では足の踏み場も無いくらいに、物が山積みとなり、そして
散らばっている。

 毎日の脱いだ服は、片付けることはなく、酷い時は放り投げてしまう。

次に着る時は探すのが一苦労だ。

ベッドの上にも脱ぎ捨てられた洋服がいる。

大学関係の書類や教科書は机の上に乱雑に置かれている。
自分でも何処に何があるのか分からない状態になっている。

机では収まりつかずに床にも置かれている。

 物を片付けられないと同時に、物を捨てられないのだ。

コンビニやスーパーのレジ袋、可愛い絵のついは箱、お菓子の空缶なや、紙袋など。

いつか使うだろうと溜め込んでいく。
紙袋は共感する人も多いのでは……。

震度4〜5度の地震が来たら、
この部屋はきっと雪崩ののように物が落ちてきそうだ。

鈴奈はこの部屋には誰も入れたことはない。

男でも女でも。