鈴奈は、夫には甲斐甲斐しく尽くしていた。

貴文と颯太と蓮との密会を絶対にバレてはいけないという気持ちもあったが、人の世話をやくのが苦ではない性格だったので、夫は妻の浮気を疑うことなく、平和に家庭生活は送られていた。

 夫はマメな所もあり、結婚記念日には、いつも花束のプレゼントは欠かせなかった。

誕生日には、ブランドのバックのプレゼント。
これも欠かしたことはなかった。

 敏輝さんは御曹司で、高収入、高学歴、高身長で、経済的には何の心配もなかった。

全くパーフェクトのような男性にも思えるが、実は彼はマザコン男だった。

結婚してそんなに経たない時に、疑惑がだんだんと確信に変わっていった。

何か納得出来ない事があると、
「母はそんな事はしなかった」と夫は言うのだった。

 そんなもやもやした気持ちも、元彼の一ノ瀬貴文と会えば、精神的にも癒される。

セフレの光橋颯太との密会はスリルとドキドキ感を楽しんでいた。

夫では得られない何かを求めて、彼らと密会し、鈴奈は生活の活力を見出していた。

夫のお父様が言った「この女は嘘つきだぞ」という言葉を、時々思い出す。

お父様は何を根拠に言っていたのか分からないが、確かに私は嘘をついている。

初対面でお父様が、私の嘘を見抜いた眼力には感服だ。

 鈴奈は、就寝中に夢を見る。
男と密会しているのが夫にばれて、修羅場になっている夢だった。
言い訳の上手な鈴奈も、証拠を突き付けられて、ドギマギしている途中で目が覚める。

『あ〜、夢で良かった』
額の辺りが、薄っすらと汗ばんでいた。

隣に寝ている夫を見つめながら、『夫には見つからない様に注意しなければ』と思うが、
辞めようという気持ちは、微塵も無い様だ。

定期的に、このような夢にうなされても、この快楽から、また満たされない気持ちを払拭させてくれるこの密会は、辞められないと思う鈴奈だった。

これは私の原点なんだから…。


             終