和やかに時間は流れていたが、突然にお父様が息子の敏輝さんに向かって、

「鈴奈さんと結婚するのか？」

「本当に敏輝はそれで良いのか？」

「この女は嘘つきだぞ」

「本当に、良いのか？」と、
念を押す様に息子に言った。

　私を目の前にして、私の事を嘘つきだと言ったのだ。

まだ会って何時間も経っていないのに、私の何処が嘘だと言うのだろうか？

長年の経験から見抜いたというのか……。これが警察庁のキャリアの実力なのか……。
それとも、当てずっぽうなのか……。

考えてても正解は出て来そうにない。
なんだか変な汗が出てきた。

敏輝さんは、いったい何て答えるのだろうか……。

敏輝さんが口を開くまで、ほんの数秒だったが、鈴奈には長い時間に感じられた。

「それは分かっている」

「それでも僕は、鈴奈さんと結婚する」

父親には彼の意志の強さを感じさせる様に答えた。

『えっ⁈、それはわかっている？』
『何を分かっているというの？』
と鈴奈は敏輝さんの言葉に動揺した。
早くこの場から逃げ出したかった。

息子の敏輝の言葉にお父様は、
「そうか…………。それならいい」と、
結婚を承諾したかたちになった。