真実はどこに


 香坂鈴奈(こうさか れいな)は有名なイタリアンレストランのチェーン店で、光橋颯太(みつはし そうた)と2人で一枚のピッツァをシェアしなが食べていた。

颯太は、高校の時の元彼。
よくある話しで、2年振りの同窓会で再会し、昔話で盛り上がった。
一度付き合った仲でもあるし、
居心地の良さも加わり、颯太は鈴奈にささやいた。

「あのさぁ、今…セックスしたらどんな感じなんだろうね」
元彼は冗談ぽく笑みを浮かべていた。

「そうねえ……今度試してみる? フフフッ」
と鈴奈も意味深にささやいた。

そして2人は連絡先を交換したのがきっかけで、また付き合いが始まった。

でもそれは、高校の時とは少し違っていて、颯太には付き合っている彼女がいるので、颯太が二股かてけいることになるが、
鈴奈は、そんなことは承知で、颯太と付き合っている。

今日もこれから2人は、ラブホテルに行くつもりだ。

 ピッツァを食べ終わった所で、鈴奈のスマホに電話の着信音が鳴った。

その画面には、朝吹蓮(あさぶき れん)の文字が…。

「ちょっとゴメン、電話してくる」と言って、店の外に出た。

スマホの通話ボタンを押したとたんに、「どうしたんだよ!」
「もう40分も待っているんだぞ!」
「LINEも既読にならないし!」

「えっっ!?」

『そうだ……、今日は蓮と逢う約束をしていたんだわ…』と、
鈴奈はやっと思い出した。

蓮が待たされて苛立っている様子が、電話の向こうから伝わってくる。

鈴奈は、いつもなら簡単に言い訳を思い付くのだが、
『まさか! この私がダブルブッキングするなんて……, 今まで注意していたのに…』という気持ちが、心の動揺を隠せなくて上手い言葉が出て来ない。

「蓮、ゴメンネ、ちょっと出掛けにゴタゴタしてしまって」

「後、20分ぐらいで着くから、何処かでお茶でも飲んでいてよ」

「ほんとに、ゴメンネ」
神妙な面持ちで、そして申し訳なさそうな声で謝った。

「しょうがないな…、待っているから早く来いよ」と蓮の優しい言葉。

「急いでいくわ! 待っててね」

「おっ! 早く来いよ!」と答えた蓮の声には、怒りはかなり収まっているようだった。