ちょ、ちょっと待って・・・!
この人、初対面の女に対して甘すぎる・・・!
本人は否定していたけど、絶対遊び人だ。
じゃないとこんなことは言わないだろうし!
「縫ちゃ~ん?俺がいるのになに考えてんの?」
「いや、朱羅ってやっぱり遊び慣れてるなぁって」
「・・・違うって言ったよね?」
「遊び慣れてない人はあんなセリフ、ほいほい吐きません・・・!」
ちょっぴり不満げな朱羅に反論すると、朱羅は掴んだままだった私の手首に力を入れた。
そのまま引っ張られて、朱羅の胸に飛び込むことになる。
やっぱりこんなこと初対面の女(&敵の(ティア))にできるくらいには、遊んでるんだろう。
ってそうじゃなくて!
「な、っな・・・ぅ」
抵抗して怪我をさせたら(私の精神が)大変なので、暴れることはしないけど、私は今パニック状態だ。
家族以外に抱きしめられたことなんて初めてなんだもん・・・!
・・・あれ、桜ちゃんには守ってもらったときに抱き寄せられたことはあるかも・・・。
で、でもそれはハグではないから!
「・・・なに、こんな時にもほかの男のこと考えてんの?誘ってんのかな、縫ちゃん?」
ちょっと勘が鋭すぎやしませんか、(敵)総長様。
「そんなことないです・・・!」
「縫ちゃんは焦ると丁寧語になるんだね。なんか真面目さんみたいで可愛いね」
「またなんでも可愛いっていう・・・!あのね、女の子は『可愛い』って言われて嬉しい子だけじゃないんだよ・・・!」
思わずそう言うと、朱羅は面白そうな声色で言った。
「へぇ?じゃあ縫ちゃんはなんて言われたら堕ちてくるのかな?」
胡坐をかく朱羅の膝の上で抱きしめられているため、彼の表情は見えない。
でも今はどんな顔してるか、絶対に当てれる自信がある・・・!
「縫ちゃん・・・可愛いね。もう全部俺のモノだね」
「・・・は、え?違うよ」
「なんで?俺に全部くれるからココに居てくれるんでしょ?」
当たり前ですと言わんばかりの声で朱羅が言い、ゆっくり髪を梳かれる。
あれ、なんか眠、くな、って・・・。
「まだ睡眠薬抜けてないからね。よくこんなに早く起きたね?まだ寝てていいよ」
髪を梳く手が止まり、体が揺れる。
朱羅が立ち、ソファーに移動したようだ。
「おやすみ、縫ちゃん。俺に選ばれた、可哀想なお姫様・・・」
朱羅にお姫様抱っこされた状態で目を瞑ると、私はあっという間に眠りの世界に連れていかれた。