街を守る正義の暴走族、蒼翼狼の姫。
それが私──来栖縫のポジションだ。
幹部がつけてくれた子の名前は私のお気に入りであり、中には私の本名を知らないメンバーもいる。
どれも総長である兄、初の計らいだ。
暴走族の姫といっても私に戦闘能力はない。
なんか、カッコよくないし、よく考えたら守ってもらってばっかりの足手まといだ。
いつか新しい、強い姫が来て私も退く時が来るだろう。
その時は潔く、今までの迷惑を謝って、感謝を伝えて、去らないといけない。
「・・・縫?帰ろーよ」
顎に手を当て、むむむ・・・と唸っていた私に、声が掛かる。
「あ、ごめんね、帰ろう」
「・・・うん、なんか悩み事・・・?俺に相談、してね・・・?」
「うん、ありがとう!」
この子はクラスメイトの水琴澪茉。
オーバーサイズのパーカーにヘッドホン、棒付きキャンディという、小さくてぬいぐるみみたいな可愛い男の子だ。
いつも無表情でナニゴトにも無関心な彼だけど、そこがまた人気らしい。
「縫、いつも1人で抱え込むから・・・」
「え、そんなことないよ!またなにかあったら相談させてね」
「・・・うん」
もしかしたら女の私よりもかわいいかもしれない、この子・・・!
「じゃあね、縫ちゃん!」
「うん、また明日ね!」
友達が声を掛けてくれて、私も手を振りながら教室を出る。
「また明日、か・・・」
澪茉がなにかを呟いたけど、聞こえなかったので私に聞かせるつもりはなかったんだろう。
「暑いねぇ。澪茉、大丈夫?」
こんな真夏なのにパーカー着るなんて、想像するだけで暑いもん・・・!
「大丈夫・・・あのね、」
言いにくそうに澪茉が切り出す。
「あの、その・・・お、怒らないで、ね?」
「怒る・・・?嫌なことしない限り怒らないよ!なにかあったの?」
「やっ、ぱ怒る、よ、ね・・・ご、ごめんなさい、縫っ・・・」
目に涙をためて眉尻を下げながら、澪茉がハンカチを取り出す。
「え、あ、あのっ・・・?」
2人揃ってあわあわしてる私たちは、はたから見れば変な人だろう。
「ほ、ほんとにごめんっ・・・」
ハンカチを持った手を握りしめ、ゆっくりその手が近づいてくる。
「えいっ」
そのハンカチが私の口に押し当てられ、首をかしげると同時に・・・ふっと視界が暗くなった。
それが私──来栖縫のポジションだ。
幹部がつけてくれた子の名前は私のお気に入りであり、中には私の本名を知らないメンバーもいる。
どれも総長である兄、初の計らいだ。
暴走族の姫といっても私に戦闘能力はない。
なんか、カッコよくないし、よく考えたら守ってもらってばっかりの足手まといだ。
いつか新しい、強い姫が来て私も退く時が来るだろう。
その時は潔く、今までの迷惑を謝って、感謝を伝えて、去らないといけない。
「・・・縫?帰ろーよ」
顎に手を当て、むむむ・・・と唸っていた私に、声が掛かる。
「あ、ごめんね、帰ろう」
「・・・うん、なんか悩み事・・・?俺に相談、してね・・・?」
「うん、ありがとう!」
この子はクラスメイトの水琴澪茉。
オーバーサイズのパーカーにヘッドホン、棒付きキャンディという、小さくてぬいぐるみみたいな可愛い男の子だ。
いつも無表情でナニゴトにも無関心な彼だけど、そこがまた人気らしい。
「縫、いつも1人で抱え込むから・・・」
「え、そんなことないよ!またなにかあったら相談させてね」
「・・・うん」
もしかしたら女の私よりもかわいいかもしれない、この子・・・!
「じゃあね、縫ちゃん!」
「うん、また明日ね!」
友達が声を掛けてくれて、私も手を振りながら教室を出る。
「また明日、か・・・」
澪茉がなにかを呟いたけど、聞こえなかったので私に聞かせるつもりはなかったんだろう。
「暑いねぇ。澪茉、大丈夫?」
こんな真夏なのにパーカー着るなんて、想像するだけで暑いもん・・・!
「大丈夫・・・あのね、」
言いにくそうに澪茉が切り出す。
「あの、その・・・お、怒らないで、ね?」
「怒る・・・?嫌なことしない限り怒らないよ!なにかあったの?」
「やっ、ぱ怒る、よ、ね・・・ご、ごめんなさい、縫っ・・・」
目に涙をためて眉尻を下げながら、澪茉がハンカチを取り出す。
「え、あ、あのっ・・・?」
2人揃ってあわあわしてる私たちは、はたから見れば変な人だろう。
「ほ、ほんとにごめんっ・・・」
ハンカチを持った手を握りしめ、ゆっくりその手が近づいてくる。
「えいっ」
そのハンカチが私の口に押し当てられ、首をかしげると同時に・・・ふっと視界が暗くなった。



