Capture your memories of one summer ~ひと夏、思い出を切り取って~

           
ヘアセットを終えて、荷物作りに取り掛かる。

手がふさがると邪魔になってしまうので、私は母親が昔使っていた黒いリュックを拝借して、そこに荷物をどんどん詰めていくことにした。

「タオル、水筒、ノート、財布…」

私は洗面台とキッチン、自分の部屋を右往左往しながら黒いリュックに荷物を詰めていく。

財布を持っていくのは本来校則違反であるが、一応お守りとしてリュックの内ポケットに入れておくことにした。

「筆記用具もあった方がいいかな…あと、プール掃除するから体操服も…」

昨日柚音たちと勉強会をしたときに移し替えたプラスチック製の筆箱を詰める。

着替えの体操服をどうするべきか考える。

さすがに母親のリュックを濡らすわけにはいかないので、私はビニール製のナップサックに体操服を詰めて、リュックに押し込んだ。

結構大きいリュックだったはずなのに、体操服を詰めた瞬間にカバンがパツパツになってしまった。

「こんなんじゃ何にも出てこないじゃん…」

体操服を出し入れしながらもちもちと考えあぐねた結果、体操服は自転車のカゴにのせて持っていくことにした。

そして、今日一番必要な一眼レフは、自分の部屋のデスクのど真ん中に、大切に大切に置かれている。

時計を見る。現在時刻、9時45分。思いのほか早く準備ができてしまった。

私が通っている中学校は自転車で5分か10分くらいでつくので、今から行ったとて待ちぼうけを食らうのは目に見えているので、私はスマホのアラームを10時10分に設定した。

「んー、暇だな…」

私はほとんど何も考えずにYouTubeを立ち上げ、ショート動画を見て時間をつぶすことにする。

しばらくショート動画を見ていたら、スマホのアラームが鳴った。

「あー鍵がぁー!」

私は部屋に駆けあがって、ベッドにスマホを投げるように置いてから自転車と家の鍵をつかみ、首から一眼レフを下げて外に出た。