Capture your memories of one summer ~ひと夏、思い出を切り取って~

            
あの女性アナウンサーの声から逃げるようにして部屋に駆けあがった私はその勢いでクローゼットを開け放って、半袖の白いセーラー服と濃紺のプリーツスカートを取り出した。

白のラインが2本あしらわれた紺色の襟を持ち上げて深紅のスカーフを通して胸当てのスナップボタンを2つしっかり止める。

濃紺のプリーツスカートのホックをしっかりかけてから、なんとなく姿見の前で一回転してみると、花が咲くようにスカートがふわりと広がった。

もう一度姿見を見る。さすがにこのままでは髪がぼさぼさだし、靴下も履いていないので外に出られない。

私はもう一度クローゼットに向かって、いつも学校に履いて行っている黒色の長いソックスを履いてから階段を駆け下りて洗面所に向かった。

メガネを洗濯機の上に置いて、蛇口の延長ホースを引っ張って頭全体にじゃぶじゃぶと水をかけると、手元が狂ってセーラー服を濡らしてしまった。

水に濡れた濃紺の襟と赤いスカーフが濃く変色する。

私は軽くため息をついて、タオル棚からドライヤーを引っ張り出してプラグをコンセントに差し込んでスイッチをオンにする。

「あっつい…」

ずっとドライヤーを当てていると、首筋にじんわりと汗が滲んできた。

髪が長いうえに毛量が多いので、ヘアセットが終わった後はいつも汗だくになっている。

「はぁ…あっついし、疲れた…」

母親のくしをまたパクって最終調整をしてから、私は首筋をすっぽり覆い隠している長い髪を手で束ねてみた。

「さすがに今日は結ぼっかな…」

くしで綺麗に髪をとかしてから、私はいつもより高い位置でポニーテールをしてみた。

「あ、いいじゃん。これにしよっと」

ところどころ浮いている毛は水を付けておとなしくさせて、私は洗面所を出た。