「どうしよう…」
燦燦と降り注ぐ太陽の中で、私は玄関の前で呆然と立ち尽くした。
カメラを持って外に出たはいいが、どこに行って写真を撮ればいいんだろうか。
とりあえず玄関の扉に鍵をかけてカーポートから自転車を出し、中学校に行く道とは反対に道を曲がって住宅街を抜けることにした。
自転車をこぐと夏のぬるい風が頬をふんわりと撫でて、髪をなびかせた。
みーんみーんみーん、とセミが横の街路樹に止まってうるさく鳴いている。
信号で止まって空を見上げると、白い入道雲が空を大きく占拠していた。
首から下げた一眼レフを手に取って露出を調整してカメラを構える。
シャッターを切ろうとボタンに指をかけた瞬間青信号になってしまったので、私は仕方なく自転車のハンドルを持ち直して信号を渡る。
――あ、そういえば遥樹くんにたこ焼き代の200円返しそびれてた。
2日前の出来事を思い出した私は休憩も兼ねて、錆の浮いた薄緑色の歩道橋を渡った向こうにあるファミリーマートに立ち寄り、遥樹くんにLINEを送ることにした。
自転車を降りて、歩道橋のスロープに自転車をのせて橋を上がっていくのは思っていた以上にキツく、歩道橋を上がりきったころには息が切れていた。
立ち止まって息を整えてから、歩道橋を慎重に下っていく。
ブレーキを握りながらゆっくり地上に降り立って、駐輪場に自転車を置いてカゴにのせていたトートバッグを掴み、コンビニに入ることにした。



