「縄野さん、何食べたい?」
私は財布を握って、同じく財布を持って前に立っている縄野柚音に聞いた。
「ノーマルかなぁ。てか澄羽っち、縄野さんって硬すぎ!柚音でいいよ」
初対面からぐいぐい距離を詰めてくる柚音に、私は小さな声で無難な返答をするのが精いっぱいだった。
「私もノーマルがいいな。」
「8個入りのノーマル一個買って、3人で割り勘しよ。遥樹―、ノーマルたこ焼き頼んどいて―」
柚音と談笑していたら、自分たちの番になった。
「8個入りのソースたこ焼き1つください。」
瀬川遥樹が女性店員に注文する。
「8個入りのソースたこ焼き1つ、600円ですね。お飲み物はいかがでしょうか?」
営業スマイルを浮かべた女性店員がぺらぺらと言葉を返す。
「いらないです。」
「承知いたしました。受け取り口で番号札をお持ちいただいて、番号が呼ばれましたら受け取ってください。」
とりあえずその場は瀬川遥樹が600円を支払い、私たちは受け取り口の近くで待つことにした。
「お金返すね」
そういいながら財布を開いたが、あいにく500円玉しかなかった。
後で両替しようときめて、私は財布を閉じた。
「ごめん、瀬川くん。500円玉しか今もってなくて、後で返していい?」
「いいけど。結城、堅苦しい呼び方やめろよ。」
ほぼ話したことのない男子には苗字くん付けだけど、と軽く混乱する。
「遥樹言い方こわーい。澄羽っち怖がってるじゃん」
彼が返事する前に、受け取り口から声が聞こえた。
「ごめん、取ってくるわ」



