この偽装恋愛、もしやとてつもなく甘い…? 傍若無人な御曹司がこんなに愛してくるなんて聞いてないですっ!

 抱きしめられていた時の方が、心臓の疲労感が強かったはず。

 それなのに、ただ見つめあうという行為が、触れ合うわけでもなくただただ視線が絡み合うだけという行為が、私の羞恥心をいたずらにくすぐってくる。

 夜の観覧車に憧れの人と二人きり。

 ゴンドラが地上にたどり着くまで、私の心臓が過労死しませんように。

「もう私の役目は終わったはずでしょ」

 バクバクをごまかしたくて、胸にたれる黒髪を指でこすりながら声帯を震わせてみた。

 視線を国見君から逃がし、煌めく遊園地の電飾を瞳に映してみたものの効果なし。

 息苦しいほどに心臓が暴れているせいで、精神の安定は訪れない。