耳も頬も心臓までもがくすぐったい。

 夢なの? 現実なんてありえない。

 間違いなく夢だよね、誰かたすけて。

 国見君からちょっとでも逃げたくて顔を傾けると、満月のように慈愛に満ちた瞳と視線が絡み合ってしまった。

 うっ、かっこよ。
 
 急上昇し続けている顔の温度を確認したいのに、私の両手は国見君に捕えられたまま。

 自分の頬だけじゃなく、耳まで真っ赤になっているのがわかる。

 唇同士が触れ合ってしまいそうな至近距離に麗しいお顔があるのが、そもそもいけないと思うんだ。

 彼の体温も吐息も優しいまなざしも、私の血液にドキドキの原液を流し込むいたずらを仕掛けてくるから息苦しい。

 平常心を取り戻すことは不可能だと悟った。

 深呼吸をくりかえし、逃げ出しそうなほど暴れる心臓を皮膚の内側にとどまらせるので精一杯。

「さらの目が潤んでる」