この偽装恋愛、もしやとてつもなく甘い…? 傍若無人な御曹司がこんなに愛してくるなんて聞いてないですっ!

 目が回りながらも、彼の腕の中から逃げ出すことに成功した。

 酸素を取り込みたくて、心を鎮めたくて、荒い呼吸のまま口をパクつかせる。

「待って待って、意味がわからない。だって私はただの仮カノで、同じクラスになってからも無視されっぱなしで」

「ごめんね。どうしていいかわからなかったんだ」

 切れ長の目を伏せた国見くんが痛々しい。

「人間嫌いの俺が、いきなり恋沼に落とされるなんて思ってもいなくて」

「鯉……沼?」と、首が勝手に傾いてしまった。

「高校に入ってすぐの頃、満開の桜の下で微笑むさらに心を奪われた」

「高1の春ってことだよね。国見君と話したことなんてあったかな」

「俺が一方的に眺めていただけ。さらは横断歩道で旗振りをしてた。登校する小学生たちが安全に渡れるように」