姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「ハァン!?誰が“うるさくてブス”ですって!?」

「自分のことだってよくわかってんじゃねーか。ブス。」

年齢より少し大人びて見える男女が額を突き合わせて口論するその様はまるで子供のよう。
側で見ている男2人はその状況を日常風景の様に受け入れて表情ひとつ変わらない。

「うるさい!
I'm not someone you can beat with a language barrier anymore!
(もうアンタに言葉の壁でしてやられる私じゃないから!)」

「ちょっとは流暢に喋れる様になったじゃねーか。」

「当然でしょ!
アンタにできて私にできないことなんてないから!」


ギャースカと終わらない喧嘩に区切りをつける様に、黒髪の男が女の額を抑えて自分の方へと引き寄せる。

肩にぶつかって上を向かされたきょとん顔を、黒髪の男は淡白に見下ろした。



「そろそろ行かないと店の予約時間に遅れるぞ。
……姫。」

「あー!そうだった!遅れたら広瀬真と榛名聖のせいだからね!」

「涼ちゃーん、今日はどんなお店予約してくれたの〜?」

磨かれた床面に4人は賑やかな足音を残していく。
どんなに遠く離れていたって、会えばいつでもあの頃に時間が巻き戻る。

眩しくて愛おしい、青春のあの日々に。

「個室の和食居酒屋。」

「いーじゃん。刺身食いたいわ。あと唐揚げと米と……」

「じゃあ今日は日本酒も飲んじゃおうか〜⭐︎」


ガラス張りの自動ドアを抜けると、飛び込んできた夏の強い日差しに目を細める。

どこかへ出発した飛行機が突き抜ける様に濃い青空を切り裂いてどこまでも飛んでいく。

「えー、嫌よ。あれ美味しくないもの。」

「ひーちゃんはお子ちゃまだねぇ。」

「なんですって!?上等よ、じゃんじゃん飲んでやろうじゃない!」

「聖、煽るな。姫は本気でやらかす。」

「酒癖悪ぃクセに飲みたがるからな、コイツ。」



――だから、強さも弱さも全部抱えて変わっていこう。

私達が望む幸せな未来に向かって!

―――「姫君の憂鬱」fin.