姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


卒業式の後、最後のHRを終えた教室は晴れやかな笑い声で賑やかだ。

友達同士で写真を撮ったり、卒業アルバムにメッセージを贈りあったりしてクラスメイト達はそれぞれの別れを惜しんでいる。

そんな中、教室内のみならず廊下の外からも多くの生徒が虎視眈々と教室の中央に集まる私達に声をかけるチャンスを狙っていた。

「……すっごい見られてるねぇ。」

「最後までこうなのかよ。ウザッ。」

「世界一可愛い私とお別れなんて、そりゃみんな悲しいものね♡」

「自意識過剰は最後まで治らなかったな。」

周りの熱視線をどうしたものかと目配せし合う。
今にも突撃されそうで、湿っぽい幕引きはさせてくれなさそうな雰囲気だ。

「姫ちゃん!ちょっといいですか?」

誰が1番に飛び出すか、という張り詰めた空気を明るい声が打ち破る。
様子を伺う生徒達の間を縫って、天音ちゃんが長い黒髪を靡かせ軽やかに走ってきた。

「天音ちゃん……どうしたの?」

突然現れて朗らかに笑う彼女に、目をぱちくりさせて首を傾げる。
すると、天音ちゃんはジャーンという音がするような動作で後ろ手に隠した卒業アルバムを差し出してきた。

「ここにメッセージ、書いてくれませんか?」

本来見開き真っ白のはずなのにカラフルで丸い文字で埋まったページを開き、空白のスペースを指差して天音ちゃんは嬉しそうにそう言った。

前にくだらないと嘲った青春感のある光景が、当事者となって目の前に広がる様に胸がドキドキと高鳴っていく。

「い、……いいの?」

「もちろんです!だって姫ちゃんは私の大切なお友達ですから。」

明るい即答。
天音ちゃんからピンク色のボールペンを受け取って、サラッとした白い紙面に華やかな色のインクを滲ませる。
緊張で少し字が震えた。

「おめでとー、ひーちゃん。人生薔薇色だねぇ⭐︎」

「いちいち大袈裟なんだよ、お前は!」

「……よかったな。」

溢れ出そうな喜びを溢さない様に緩む唇を甘く噛む。
たった一言のメッセージを時間をかけて書き上げその余韻を噛み締めていると、ワッと大勢の息巻く声が湧く。